第2話

 桶井さんは五歳の頃、ボーリングの球ほどある大きさのダンゴムシを見たという。

 それだけなら子供にありがちな空想と現実の混濁と説明がつくのだが、彼女の母親もそれを目撃していた。

 父親や周囲の人に母娘揃って説明したので(無論得られた反応はクールなものだったが)間違いないと桶井さんは今でも考えている。

 だが桶井さんが高校にあがるころになると、母親はそのダンゴムシの話をなぜか忘れていた。

 いくら話しても、露ほども憶えていなかったという

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る