村の皆ごめんなさい。【勇者】の魅了能力で魔王呼んじゃった

アーモンド

プロローグ

俺、黒原くろはらそうは……死んでしまった。


何でまた俺死んだのかなぁ、なんて考えていたら、目の前にいきなり超絶可愛い女の子が現れた。眼福眼福。


「アナタ……魔王と戦えますか?」


魔王て。

いきなりそんな事言われても、理解が追い付くはず無いじゃない。


「俺、アナタの為に戦いますッ!!」


あーあ、これだから。

俺は正直言って、可愛い女の子から命令されたら断れない。

だって可愛いんだもん。可愛いは正義、これ重要。

ましてこんな超絶美少女からの命令だ、必要とあらばこの不肖黒原、命を捨てませう。


かくしてチョロい俺は魔王と戦う運命を背負い、赤ちゃんから人生やり直しが決定した。




そこは魔王の悪しき力があまねく世界【トスエーク】。

1000年に1度産まれるという【勇者】の再来を待ちわびた民衆は、その日を祝日とした。

その日こそ俺、【勇者】ソウの誕生日だ。


生まれつき俺――厳密にはこの世界で産まれる【勇者】――には、なにがしかの特殊能力が備わっている。


俺に与えられた能力は……【魅了チャーム】。

簡単に言えば、種族関係なしでハーレムをつくることが出来る能力である。

俺にとっては最高も最高、この上なくありがたい能力だ。


だってハーレムだぞ、あのハーレムだぞ!?


成長してそれを知った時、俺がどれだけ舞い上がったことか。

筆舌に尽くし難いが、そこはご想像にお任せするとしよう。




最初は能力の抑制に苦労した。

加減を間違えると男も寄って来た。さすがにソッチの趣味は無いからめちゃくちゃ練習したものだ。

応用を利かせると植物と話したり動物を呼んだり出来るようになり、そしていよいよその時が訪れる。


「……勇者様……私を妻にして下さい……」


綺麗な女の子だった。

青肌はあまり好みでは無かったのだが、逆に魅了されそうになるくらい可愛かった。

頭には羊みたいな角が生えていて、背格好も何か愛らしいサイズ感。


…………なんて女の子観賞にふけっていると、外から村人たちの騒ぐ声が聞こえてきた。


「魔王だ!魔王がこの中に!!」

「まさか。魔王がこんな辺境になど……」

「勇者様がこの中にいらっしゃるぞ!!!」


え。

俺は思わず女の子の顔をまじまじと見つめる。

「…………君、名前と職業は?」

「私はエル。職業は…………、魔王」


魔王。

最後のフレーズだけが耳の中でこだまする。

勇者なのに。

俺勇者なのに、魔王を仲間にしちゃったよ。


…………ここまだ最初の村なのに!!

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