電子レンジください
一人分の食事をつくることは意外と難しい。あまった夕食にラップをかけて冷蔵庫にいれること、これを生活と呼ぶのならば僕は生きていると言っても許される気がする。けれど料理は冷めていく。電子レンジはない。冷たい食卓でおいしいと笑うことはとても難しい。
雪がふっている。つまさきまでしみる寒さにふるえる。まっしろが綺麗なんて嘘でいいじゃないか。重たい空から落ちてくるまっしろはこんなにも冷たい。ぬくもりが全てだと恋人たちがあたたかく手をにぎる夜、半額惣菜のはいったビニール袋を右手にさげる。惣菜が冷めてしまうから早く帰らなければいけない。
雪がふっている。足取りの重い冬。惣菜も部屋も冷たくなっていく夜。奪われた温度を取り戻す術を僕はまだ知らない。
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