アイスレモンティー

 甲子園球児が薄汚れた白球に一喜一憂しているころ、ハーゲンダッツがおいしい。太陽が輝く。きっと外は暑いのだろう。弟の自動車に関するうんちくを聞き流しながら寝転んでスマートフォンをいじっていると、何もしていないのに自分が澱んでいくような気がする。気がするっていったけどこれは気のせいじゃないよ。クーラーの冷風でさめていく人生の温度に悲しいねってつぶやく。


 青春と定義付けられた線香花火に着火したら一瞬で火玉が落ちて闇夜にはじけるひまさえなかった。紙製の残りくずをまだポケットに入れたまま、むし暑い夜を徘徊する。いちご練乳のアイスを買うことにして、しかたなくコンビニエンスストアを目指す。この感情を悲しいと言ってもきっと理解されないだろうから、適当にアイスレモンティーと名付けてみるんだ。アイスレモンティー。

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