密航者
最後の扉が開き、用心深く足を踏み入れると、2人の目前に、手足を拘束された男が一人、転がっていた。男は、彼らの知らない言語でわめきたて、しきりに暴れていたが、もっと酷いのは、その背後に広がる広大な食糧庫の、無残な有様だった。
ビイは、エイに肩を近づけ、小さな声で言った。
「どうしようエイ。見た限りでははっきりしないけど、私たち、食べていけるのかしら。きっとパルの故障よ。こんなことになるまで気付かないなんて、絶対おかしい」
絶句していたエイも、ようやくビイの言葉に頷き、言葉を返した。
「たぶん、なにか恐ろしいことがあったに違いない。おそらくこの密航者が、すべての要因だろう。ビイ、いま、パルと繋がっているかい?」
エイに言われてビイは呼びかけたが、パルの応答は無い。
「ダメだわ。2人でどうにかしないと。そのためには、まず」
そこでようやくビイは、密航者に視線を戻す。その男は、体長約2メートル。重量は、70キロはゆうにあるだろう。がっしりとした骨格に、凶暴な爪と歯。もし、この生き物が自由になったら、エイだってきっと敵わない。
ビイは男の頭めがけて、拳銃を構えた。
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