緊急対応
2人の声に反応したパルだったが、既に船内の異状は察知していた。しかし、そのエラーを解決するための、複数存在する連絡経路が、人為的に途中で絶たれていたのである。
パルの依頼に、エイが応える。
「わかった。食糧庫は、パルの認可があれば、立ち入り可能区域だったね」
エイが、不安そうな顔をするビイに言う。
「どうやら、僕たち以外の何者かが、食糧庫を荒らしている。今日になって計器の異常が出たけど、いつからいたのか。密航者は、パルそのものに損傷を与えたらしい。生命維持に必要な空調と水については、とりあえずパルがコントロールを取り戻した。ただし、食料は不安だって言ってる。
それから船の機関部だけど、いま、燃料の調達に行ったロボットから、およそ50年分の備蓄が消えていると連絡があった。新しく精製するとしても、2週間は、船の活動レベルを著しく下げて、航行する必要が生じる。パルとの交信も、限定された回数になるだろう」
ビイは、エイの話に頷いて、その手を握りしめる。
「分かったわ。この危機をどうにか乗り越えないとね。その密航者の排除が不可欠だけれど、パルはもう、捕まえたわよね」
ビイがエイに言った言葉を、パルも聞いていて、応答する。
『捕獲完了。ただし、船外へ通じる扉が故障しており、即時排除不可。そのため船員による直接的な排除を、要請する』
パルの言葉に2人は青ざめ、顔を見合わせた。しばらくしてエイは溜息を吐き、困った顔をしながら、引き出しを開け、対異生物用の小型の拳銃を取り出した。
「訓練は受けているけど、これが実践の初回ということになるね。大丈夫かい?ビイ」
ビイはエイから銀製の拳銃を受け取り、首を振る。
「嫌だわ、こんなの。パルの回復を待って、任せればいいのに。もし、目の前で逃げたりなんかしたら、怪我をするかもしれないし、もしかしたら私も死んじゃうかも」
エイは宥めるように、エイの肩に手を置く。
「訓練じゃ、君の方が優秀だったろ。でも、いざという時は僕が守るよ。とにかく急ごう」
食糧庫に向かうエイとビイの背中を、パルの視線が追いかける。幾つかの扉が、エイの虹彩認証で開き、2人は進んだ。
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