変化
彼らの殆どは、受け入れ先の条件を満たす優秀なエンジニアたちで、16歳以下のこどもはいなかった。
彼らは、船の航行システムから、遺伝子交配と教育を管理するAI、そして船内の衛生環境を維持する多様なロボットのメンテナンスまで、あらゆることに通じていた。
残りの搭乗員は僅かに、食料となる植物や動物資源の栽培、飼育と、精製水の管理をする人間たちであり、彼らの作業工程は、すべからく、「パル」による生産管理に準じるものであった。
当初は順調に見えた旅も、20年を超えて死者が目立ち、パルによる人工授精と、新たな命の誕生がもたらす課題が見えてきたあたりから、船内に不安が満ちるようになった。
人々は、幼い子どもの教育を、自分たちの手で行うことを望んだが、AI「パル」は違った。
エンジニアとしての知識や技術を含め、かつての地球人類の末裔として、あらゆる記憶財産を託すための一貫教育を、主張していた。感性、そして知性に関する問題。パルは、より”偏りの少ない”教育を目指していた。
そうして、”パルの子どもたち”が成長し、船内の過半数の人間を占めるころ、人員は、約130人となっていた。AIの出した理想数値内である。だがこのころを境に、或る変化が起きたのだ。
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