よくある勧善懲悪モノでは、主人公が敵を許し逃がしてしまったために何度も襲われる……といった展開があります。
散々悪事を働いた敵が、しれーっと味方サイドについている……という展開もよくあります。
そういう描写を見るたびに、私はイライラ・モヤモヤを抱えてきました。
いわゆる『カタルシスに欠ける』というやつですね。
本作はそれがありません。
悪い奴が徹底的に抹殺されます。
主人公は容赦なく敵を叩き潰しますが、『やりすぎ感』が出ないようなヘイト管理が上手なので、すっきり楽しく読めます。
クズがいかにクズかが丁寧に描かれていることや、主人公の容赦なさについて周囲が『肯定しない』ことがその要因だと思います。
周囲が主人公の言動を全肯定するのではなく、ドン引きすることにより絶妙なバランスが保たれているように感じます。
あ、でもバレリア先生は流石に可哀想かも(笑)
本作はざまぁ・成り上がり・下剋上をベースに爽快な暴力的描写、時折現れる軽妙な下ネタ、そしてなんといっても戦場での軍人たちの己の生き様を賭けた闘い
それらを支える会話のやり取りによって登場人物は外見の描写は抑えめながらも一人一人が非常にキャラが立っています
たくさんの魅力が散りばめられた
読んでいて全く飽きさせない良作ですが
これらの要素だけではこの作品の生み出す熱量を言い表せていないように感じます
やはり主人公ヘーゼンハイムの狂気的で確信的な妄執が物語を廻しつづけ、読者もそれに惹きつけられているのではないでしょうか
自分の中では小説、漫画、映画なども含めて間違いなく史上最高の主人公です