紙の主張

連野純也

紙の主張

 皆さん。

 決して惑わされてはいけません。

 

 我々紙は、自身に印刷することが人類三大発明の一つと呼ばれるほど、人類の発展に重大なる寄与をいたしております。

 古くはエジプトのパピルスから、我々は人類に親しまれておりました。

 現在では燃えない紙や耐水性の紙などの、さまざまな種類が作られております。

 我々は常に進化し続けているのです。

 

 ひるがえって石はどうでしょうか?

 石器時代を過ぎれば、ほとんど見向きもされていないではないですか。

 せいぜい漬物の上に乗る程度にすぎません。

 

 耐久性でいうなら、和紙のことも忘れてはならないでしょう。

 ここ日本の誇るべき和紙は千年の寿命を持つのです。

 確かに石に比べれば短いかもしれませんが、揶揄やゆされるほどではないはずです!

 

 あ、どうもどうも。

 熱くなりすぎました。

 

 もっとも重要な話をいたしましょう。

 紙幣です。

 世界各国、最も高額な貨幣は常に我々、紙なのです。

 我々が世界を動かしていると云っても過言ではないのです。

 

 もし。

 あなたが1トンの石と、1万円のどちらかを選べと云われたら、あなたはどうしますか?

 真剣に考えてください。

 我々と石と、どちらにつきたいですか?

 


 「包むこと」は、勝ちなのか? と先ほど石は云われました。

 包めもしないものに云われたくはありません。

 結婚式にむき出しでご祝儀を贈りますか?

 プレゼントを大好きな人にむき出しで贈りますか?

 常識のないやつだ、と怒られるに決まっております。

 過剰包装が問題になるほど人類は包むことが大好きなのです。

 包むことは文化なのであります。

 頭の固い石にはこの文化のかぐわしさを堪能することは永遠に無理でありましょう。

 包めばランクが上がる――それが事実であります。


 グーはパーには勝てません。

 石が何を云おうとも、これからもずっと変わることはないでしょう。

 それが真理なのです。


 パーが勝ちます。

 我々、パーが勝つのです。


 ありがとうございます、ありがとうございます。


 手短ではございますが、ご清聴ありがとうございました。


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