今回の話とは全く関係ないけど、ゴキブリって人間と対峙した時、人間が怯えているということを認識してわざと人間に特攻を仕掛けるらしい。
悪魔かよ。
そういった感じに、この小説はある「脅威」に対して、憤然と特攻を仕掛ける人々の姿を描いた物語だ。不要と思われる言葉を次々に削いで、削ってしまったかのような文章は、しかしそれによってその形を無骨なものへと変えることに成功している。つまりは、決して一概に美しいとは言えない、泥にまみれ汚れながらも「脅威」に立ち向かう彼らの姿と文章の型が見事にマッチしているということだ。
それ故に(おそらくコンテストの字数制限に依るものだろうが)、超超短編であることが実に惜しい。話の起伏を富ませ、じっくりと「脅威」への不屈の精神を書き上げたならば、最後の一文も相まってこの作品はさらなる飛躍を遂げるだろう。
そうすれば、主人公たちがいつか火星に行ける日も来るはずだ。