長槍短編集

長槍

玉ねぎ

 あるところに玉ねぎがあるとしましょう。ええただの玉ねぎです。

 この玉ねぎには土がついていますから、当然払ってから食べます。

 ここでの払うには二つの意味があって、土を払うという意味と土がついているぐらい鮮度の高い玉ねぎには当然それ相応の報酬を支払らわなければならないという意味の二つが内包されているわけですね。

 

 これはもちろん玉ねぎだけではなく人間にも言えることなんです。

 大学を出たばかりの新卒を土のついた玉ねぎとすると、企業は食べる人なわけですよね。就職の際はやはり土のたくさんついた新卒を取りたがるわけですが、いつまでも大学気分じゃ困るわけですから社員研修などで土を払い皮をむいてたべます。

 

 ではここで学歴は何に比喩されているのでしょうか。賢い皆さんならお判りでしょうが、土です。企業からしたら良質な土で育った玉ねぎを鮮度の高いうちに食べたいわけですからね。でも、考えてみてください。玉ねぎがメインの料理ってほとんどないんですよ。たいていジャガイモとかそういう洗ってすぐに使えてかつ栄養たっぷり食感よしみたいな野菜が料理にくるわけですよ。


 学歴が土ならば。どんなに良質な土の中で育っても、玉ねぎだったら料理のメインにはなれない。どんなに状態の悪いジャガイモでも、ジャガイモであれば料理のメインになれる、そういうことになります。この比喩を直すとこんな感じ。どんなにいい大学を出ようとも、社会でいざ働くときに使えるまでに時間がかかったり仕事にクセが強かったりすると出世できない。逆にどんなに悪い大学を出ようとも、即戦力となり、オールマイティーに仕事をこなすことができれば、出世することができる、とこんなところでしょうか。


ブラック企業の経営者みたいなこと言うな、と思われた方もいるかもしれません。しかし、なぜ私が回りくどく野菜で例えているかというと、結局のところ、玉ねぎの種からは玉ねぎしかできず、ジャガイモの株からはジャガイモからしかできないということ、つまり上記に書いたようなことは親の環境、家庭環境に大きく依存してしまう、ということです。おいおいさらに夢がないな、と思った方、そんなことは見当違いです。ニンニクなんか姿も見えない形で使われる、いわば使いつぶし社員みたいな野菜ですが、発酵させて黒ニンニクにすれば、高齢者の方々に大人気の健康食品に大変身です。黒ニンニクをわざわざ食事とは別で食べるくらいですから、比喩を直したらたぶん CEOレベルの大出世だと思います、黒ニンニク。ブラックですけどね。さて一つの玉ねぎからここまで話が飛びましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。ご自愛ください。

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