第6話
呆気なく魔王に勝利した私たちは、王城芝生広場にて、魔王撃退パーティーを開いていました。
広間には、食欲をそそるような美味しそうな食べ物が長テーブルにずらりと、並べられていました。
「じゅるり...」
あの後、魔王の死体はその場になかったので、きっと魔王は逃げていったのでしょう。
惜しくも仕留めることが出来なかったのは、残念なことですが、誰一人死ぬことなく、終わりを迎えれてよかったと思います。
「ありさ殿...」
私を呼ぶ声が聞こえました。振り向くとマリスちゃんがそこに立っていました。今まで、私の名前を一度たりとも読んだことなかったマリスちゃんが、私の名前を呼ぶなんて驚きです。
「どうしたんですか?」
「いや、ありさ殿には今回世話になった。改めてお礼をと思って...」
マリスちゃんが恥ずかしそうに、顔を赤く染め言いました。
「お礼か...なら私のことは、ありさって呼び捨てにしてよ…」
なんだか少し気恥ずかしいですが…
「あぁ、分かったありさ。これからもよろしく頼む」
「こちらこそ!!マリスちゃん!!」
私は、笑顔で差し伸べられた手を握り返しました。私は、ゲームに勝つためだけ、自分の為だけに魔王を撃退したけれども、結果的にマリスちゃんのこの優しい笑顔を守れてよかったと思ったのでした。
◆
気が付くと、私はもとの引きこもっていた自身の部屋に戻っていました。
自室のふかふかのベットの上に寝転がっている私。どうやら章をクリアしたので、お家に戻ったのでしょう。
「やったぁああ!!お家だあぁぁあ!!ニート最強!!」
素晴らしい私のお部屋の素晴らしいベッドに寝転がっていると、あの出来事がまるで夢だったかのように感じました。
「夢じゃありませんよ?」
私がそう思っていると、聞き覚えのある金髪悪魔の声が、どこからか聞こえました。ベッドから飛び起き身構えます。
「誰ですか!!どこの金髪悪魔ですか!!」
「分かっているじゃありませんか...。望み通り一か月の休息期間を与えただけです。安心してください。ここでの一か月は、あっちの一分にも満たない時間ですから...」
「いや、全然安心できないし!!もう、マリスちゃん自身が強くなったから、私必要ないじゃん!!引きこもってても問題ないじゃん!!」
「ダメです...。それでは、また一か月後。さよ~なら~」
金髪悪魔の声は、木霊しながら消えていきました。
どうやら、私の冒険はまだまだこれからのようです...。
「そう言えばマリスちゃんに願い事言ってなかったな...」
私は、そうつぶやいた後、パソコンに向かい「戦国のファルコン」と書かれたアイコンをダブルクリックするのでした...。
ニートな私は物凄くお家に帰りたい。 カルシウム @redlight
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