第5話

作戦会議の翌日。


私は、マリスちゃんとその他、戦えそうな騎士たちをお城の広場に集めました。正直もうお家に帰りたくて、帰りたくて、しょうがありません。


「皆さん、よく集まってくれました」


私は、集まってくれた甲冑を着た騎士たちにおざなりにお礼を言います。


「では、皆さん防御なしでお互いを斬り合ってください」


私が唐突にそして投げやりに言うと、マリスちゃんと騎士たちが斬り合いを始めました。騎士たちは、仲間を剣で切り裂くことに何の躊躇もありません。


客観的にみるとなんてひどい集団なんだと思うかもしれませんが、これも魔王を撃退するために必要なことなのです。


本来なら、血みどろの場面かもしれませんがその場には、血一滴流れていません。それどころか、騎士たちの剣技は見る見る内に速くなっていきます。


騎士たちは、そのことに驚きながらも剣を互いの体にぶつけあいました。


ここで種明かしをしましょう。私はこのゲーム「戦国のファルコン」のヘビーユーザーです。なので、私はこのゲームのバグは知り尽くしているのです。そうこれは、バグです。勇者が、仲間をパーティーに入れることで同じパーティーの人間には、攻撃が効かなくなります。此処にバグがあったのです。パーティー同士の攻撃が効かずとも、本来の敵に攻撃したようにスキル熟練度が上がるのです。このバグを、ネットでは「パーティー斬る」と名付けられていました。

私は、この「パーティー斬る」を利用して、マリスちゃんやその他、騎士たちのスキル熟練度を上げることにしました。


因みに、私が仲間を攻撃してもスキル熟練度は上がりません。


「なんだかなぁ~...」


そんなことを言いながら、マリスちゃんがいつものように眉間にシワを寄せた微妙な顔をしながら、剣を仲間の騎士に突き立てていました。その姿を見ているとちょっと面白いです。





そして、魔王到来当日...


私たちは、「パーティー斬る」バグを使い、魔法、剣、弓、盾、鎧の熟練度をマックス100まで上げました。

それぞれの剣技や魔法の使いどころに強弱はあれど、もう最強。万全の状態でこの日を迎えたと言ってもいいでしょう。


そして...


魔王は、私の宣言通り城内に単身で現れました。


場所は城内、謁見の間。私が召喚された場所です。その場所に黒色のブラックフォールが突如現れ、魔王はその中から姿を見せました。


「出たな魔王...」


マリスちゃんは、銀色の美しい細剣を握り直して言います。


「ほう、私が来ることをまるで知っていたような口ぶりだな...?」


長い黒髪に黒装束の美青年の魔王は、大きなコウモリの様な翼を広げながら言いました。私は、魔王が怖かったので王座の裏に隠れることにしました。


頑張れマリスちゃん!!負けるなマリスちゃん!!


私の心の声が届いたのか、マリスちゃんは此方をちらりと見て不敵に笑います。


そして、魔王の周りを、私に鍛えられたその他騎士とマリスちゃんが取り囲みました。


「私は、お前にここで殺される運命だったらしい...。だが、それを知らせてくれた者がいた。そしてその者は、私を強くしてくれた。だから貴様に負けるわけにはいかない!!」


マリスちゃんが、魔王を睨みつけながら言います。


「そうか、ならその力を見せてみるがいい?私に傷を負わせることは不可能だと思うがな?」

「いいだろう、覚悟しろ!!魔王!!」


魔王は、やはり油断していました。マリスちゃんじゃあ、自分に傷一つつけることは出来ないと、高を括っているのです。


そして...マリスちゃんは地面を削り取りながら駆けだしました。魔王は、マリスちゃんの思った以上の速度に目を見開きます。


「なっ!?」


しかしもう遅い。魔王がヤバい!!と思った瞬間にはマリスちゃんは魔王の懐に入り...


「くらえええええ!!」


銀色の細剣を魔王の心臓へと深々と突き立てていました。


「がはっ!!」


魔王の口から、赤色の吐血が飛び散ります。そして、マリスちゃんは銀色の細剣をゆっくりと引き抜き、引き抜いた個所からは大量の血がドバドバと溢れてきました。


「油断したな魔王...」


崩れ落ちる魔王を見て、マリスちゃんは言い放ちました。


私やその場にいた、その他騎士たちは、勝利を確信しました...。


「やったか!!」


しかし、その他騎士の誰かがそんなことを言いました。


「誰ですか!!変なフラグ立てた人!!」


私は、ごみの様なフラグを立てる輩に向かって叫びました...。私は、魔王を見ます。すると...魔王の体から赤黒い瘴気が立ち込め始めたのです。


「マリスちゃん離れて!!」


私は、叫びます。マリスちゃんは、後ろ方向に飛んで後退しました。


「なんだ!?」


フラグを立てたバカ騎士が一歩後ずさります。


「驚いてないで!!速く騎士さんたちは防御態勢!!」

「「「「「「はい!!」」」」」」


私が指示すると、その他騎士たちはマリスちゃんの前に立ち、持っていた大きな盾を掲げました。


「「「「「「タワーディフェンス!!」」」」」」


その他騎士たちがそう言うと、盾が金色に輝き始めました。そうこうしている内に、魔王の右手から赤黒いレーザー光線が放たれました。


光線は、騎士たち向けて物凄い勢いで一直線に飛んでいき...。


「「「「「「ぐっ!!」」」」」」


その他騎士たちの、金色に輝く盾に命中しました。


赤黒い光線を盾で受けているその他騎士たちは、苦痛の顔を浮かべてました。


しかし、何とかその光線を防ぎきることに成功したようです。


「なん...だと...!?」


魔王は、開いた口が塞がらないようで、とっても驚いている様子です。


「マリスちゃん今です!!止めを刺して!!」

「分かった。行くぞ!!うおおおおおおおおお!!」


マリスちゃんは、細剣を後ろに引きます。すると、細剣の周りに渦の様にして金色の光が現われました。


「くらえ!!「ぺネトレーシングライトッ!!」」


マリスちゃんが、細剣を前に突き出すと先端から光りの光線が放たれました。その光線は、魔王に向かって飛んでいき...


「があああああああ!!」


魔王に突き刺さるようにして命中しました...。


今度こそ、私たちは魔王に勝利したのでした。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る