第4話 魔王side
魔王城魔王の部屋。
漆黒で覆いつくされた大きな城の一室。その簡素な部屋のベッドで魔王グリフォンは、朝の光と共に目を覚ます。
昨晩、魔王グリフォンは、人国ファルコンに勇者が召喚されたことを伝令より知った。
魔王グリフォンにとって、そんなことは心底どうでもよかった。人など簡単に滅ぼすことができるし、もうすでに王手をかけていると言ってもいいという状況だからだ。
グリフォンは、不敵な笑みを浮かべながら起床する。
グリフォンの容姿は、黒い長い髪の美青年で人間とさほど変わらないが、背中の大きなコウモリの様な翼が特徴的だ。
グリフォンの朝は早い。まずは、自身を鍛えるために自室にて筋トレ、そして爽やかな朝の風を切りながらランニングを行う。
その後、魔王城の大きな食堂にて、バランスの良い食事をとって、業務に取り掛かる。グリフォンの仕事は、主に雑務、魔族の統括、戦略会議、そして自分自身での進軍である。
その業務を淡々とこなしていくグリフォンの姿は、まさにできる男と言ってもいいだろう。
そんなグリフォンがなぜ?魔王何かをやっているかというと。
もともと下級悪魔の家庭に生まれたグリフォンは、幼い時に思った。なぜ私が下級悪魔生まれなのだろうかと?下級悪魔は、魔族の中でも低ランクでごくありふれた魔物と言ってもいいだろう。そんな事が、グリフォンには不思議で仕方なかった。
グリフォンは、自身の身分は下級悪魔などで収まっていいはずはないと、幼い時から思っていたのだ。なのでグリフォンは、さも当たり前のように進化していった。
そして、現在魔王に至るというわけだ。人間と魔族の違いは進化するという特徴を持っている。魔族の寿命は大体平均して1000年、人間の十倍以上は、生きるのだが、その中でグリフォンは、日々の努力により800歳にして1000度以上の進化を遂げて魔王へと至ったのだ。
では、何故グリフォンが人間を滅ぼそうとするのか?それは、グリフォン自身の個人的な感情で、そうしているのではなかった。
努力して働き続けたグリフォンは、気づくと魔族の王、魔王となってしまった。だからグリフォンは、魔王になりたくて魔王になったのではない。故にグリフォン自身、魔王として掲げる目標はほとんどない。ので、グリフォンはただ、魔族たちの意思を汲み取り、人間の国を亡ぼすことに決めたのだ。
正直、グリフォン自身は人間に何の興味もなかった。だが、国民の魔族たちは、尋常じゃないほど、人間に恨みを抱いている。
魔族は、もともと自然と共に生きる生き物である。そんな魔族にとって愛すべき自然を、人間は自分たちの欲望のためだけに意図も簡単に奪い去ってしまう。
そんな人間を魔族たちは、許すことが出来なかったのだ。魔族たちは誓ったのだ人間を滅ぼすことを...。
そして、魔族たちはグリフォンを祭り上げ、人間を滅ぼすのにあともう一歩というところに迫っていた。
グリフォンは、自分が利用されているなんてまったく思っていない。グリフォン自身、魔王という座に居座ることは当然であると思っているからだ。
そして、魔王グリフォンは、人間の旗印であり、最後の希望である騎士姫マリスを殺すことに決めたのであった。
魔王自身その決断は業務的仕事の一環でしかなかったが、魔族たちは、遂に人間への復讐を果たせると歓喜した。
「さてと、仕事を始めるか...」
最強の社畜魔王グリフォンは、大きな黒い椅子に座りながら呟くのであった。
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