そしてまた異世界を救うお仕事

 いつものカレー屋の地下。今日も今日とてだらだら三昧。

 ソファーよりベッドのほうがだらーっとできるのでベッド召喚。

 気まぐれにゲームをする。いい休日だ。


「あんまりだらだらしていると、腕が鈍るよ」


「だからトレモ中なんだろ」


「格ゲーの話じゃなくてだね……」


 ヘスティアと軽く対戦しながらトレモ。コンボ練習はこまめにしよう。


「だってフィオナが訓練中なんだぞ。しょうがないだろ」


 遠くに目をやると、絶賛特訓中のフィオナがいる。


「フレアチェーン!」


「負けません! ブリザードクラッシュ!」


 遠くで戦っているフィオナと吹雪にフレイア。

 魔力が弱くなっていたフィオナに、どうせなら魔法の勉強をさせようと思い、俺が二人を連れてきた。

 今は魔法の撃ち合いなんぞやっている。組手のつもりだろう。


「すでに格ゲーの腕じゃ、ヘスティアに近いくらいまで上達してんぞ」


「やるねフィオナ。私と先生の間に入ってくるとは」


「いずれ俺と同レベルになりゃ面白いんだが」


「それは酷というものさ。はいこれ、次の異世界の資料」


 空中に投影された映像には、SF感満載の宇宙戦艦や巨大ロボットが映る。

 なかなかいいデザインだ。作ったやつを褒めてやりたいところだぜ。


「なんだ戦争でもしてんのか?」


「いや、突然現れた怪獣と戦っている。原因も出処も不明。死ぬほど数が多く、個体もまあ……そこそこ強い。スーパーなロボットで駆逐する感じだね」


「よくある人類絶滅の危機ってやつだな」


「先生にはそういう異世界を優先的に回しているからね」


 まあそうじゃないとつまらないしな。適当に暴れていい怪獣は気楽でいい。


「教官! おやつをお持ちいたしました!」


「ありがとうシャルロット。でも教官はやめて欲しいな。私はもう教官じゃない」


「失礼いたしました!」


 びしっと敬礼するシャルロット。わかってないみたいだな。

 こいつも担当世界が平和になり、休暇らしいので連れてきた。


「教官ねえ……ヘスティアは自由人なイメージだから、ピンと来ないな」


「何をおっしゃいます! 厳しくも優しく、凛としたそのお姿はまさに女神!」


「やめて、本当に恥ずかしいからやめて」


 ヘスティアの顔が赤い。こいつが照れているところなんて久々に見るな。


「これは、次の異世界ですか?」


「おう、次はどんな強いやつと女神がいるかな」


「先生の横にはいつも違う女神がいるねえ」


「そうだな。飽きなくていいぞ」


 女神は存在から特殊だ。おそらく、それが俺を救っている。

 駄目でもいい。その駄目っぷりが楽しかった。


「ここだけ聞くと最低ですね」


「うっさい。やましい気持ちはない」


「それはそれでこっちの身にもなって欲しいな」


「意味がわからん」


 ヘスティアの言うことは、たまーに理解できん。

 とりあえずおやつに集中しよう。


「よし全員で一休みだ」


「先生はずっと休んでいるだろう」


 ずっと訓練を続けているフィオナと魔女連中にも声をかける。


「おやつが来たぞー!」


「そう、なら一度休憩にしましょう、フィオナ様も」


「はい、参りましょう」


 全員こっち来るので、人数分の椅子とテーブルを召喚。


「フィオナ、魔力は安定してきたか?」


「はい、シャルロットさんと魔女の皆様のおかげです」


「まさか女神様に魔法を教える日が来るとは思わなかったわ」


 仲も良好なようで安心した。最初は女神ってことで萎縮していたもんだ。


「俺が教えた魔法どうだ?」


「すみません……ちょっと難しくて」


 クッキーとマカロン食いながら雑談。冷たいミルクティーもいい味だ。


「先生の魔法か、何を教えたんだい?」


「色々だけど、まず因果律をいじって……」


「おかしいおかしい、まずで因果律って単語が出るのはおかしい」


 一応理に適った魔法を選んだつもりだが、なんか不評である。


「フィオナは因果さえコントロールできりゃ強いだろ。ガチャ女神なんだし」


「あんた規格外なんだから、覚えさせられる女神様の気持ちにもなりなさい」


 女神なんだからできると思ったんだよ。

 もっと補助器とか、特殊装置とかあればいいかもな。


「よし、いっそ魔法と科学混ぜよう。ちょっと異世界救ってくるから、晩飯作っておいてくれ」


「唐突だねえ。ま、好きに楽しんでおいで、いつでも帰りを待っているよ。先生」


「いってらっしゃい、勇者様」


「お土産よろしくね」


「夕食はおまかせください!」


 女神と魔女に手を振り、また別世界へと旅立つ。

 俺はこれからも勇者として、週休六日で異世界を救う。


「さーて、待ってろよ異世界」


 次はどんな女神と、どんな敵に出会えるか。まだ見ぬ技術や食材も楽しみだ。

 期待に胸を躍らせながら、俺の勇者生活は続いていくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

週休六日、七時間休憩ありで異世界を救うお仕事 白銀天城 @riyoudekimasenngaoosugiru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ