断章1 出会い
第8話
そしてまた、1週間ほどたった夜。
俺は再び夢が不自然なくらいに鮮明になる感じを体験し――。
気がついたら、花火の音が、人々の歓声が、鼓膜に響いている。
どうやらまたあの日に、13日の夜に戻ったようで。
俺は玲奈の手首を掴んでいた。
こちらを見ている玲奈の顔は、驚きに満ちていた。
「えっ!?」
この状況にはっと気づき、俺も驚いて変な声を出してしまった。
「えっ!?」
玲奈も俺の声を聞き、思わず声が出たようだった。
ますますわからないという表情の彼女に、俺は何と言ったらいいのかと、かなり焦った。
「ああ、ええっと……」
「どうしたの……?」
言いたいことがあるんじゃないのかって、強引に尋ねたらだめなのか?
前はそれで失敗したんだよな……。
でも、どうしたらいい……?
迷った末に俺は、下手にアプローチしようとするのをやめることにした。
「あのさ、玲奈」
「何……?」
俺は1つ深呼吸をして、焦る心をなんとか落ち着けようとする。
「お前、死のうとしてないか? もしかして、だけど……」
「!?」
玲奈はさらに目を見開き、驚きを隠せないでいる。
「なんで……?」
「驚かないで聞いてほしい。いや、こんな話信じられないと思うし、俺の妄想だと思ってひくかもしれないけれど……」
俺はありのままを、この去年までより長い8月に、繰り返した日々に自分が体験したことの全てを話すことに決めた。
信じてくれなくたっていい。
変なやつだと思ってくれたっていい。
君が生きていてくれるのなら――。
「……俺、タイムリープしてきたんだ。1週間後の未来から、2回」
「た、たいむりーぷ……?」
案の定、玲奈は信じられないようだ。
「み、未来から? 本当に、そんなこと、できるの……?」
「俺だって、自分でもいろいろとわかってねえよ。なんか、同じ夢ばっかり……、今日の、この花火大会で、こうしてお前といる夢を何回も見て、気づいたら夢が現実みたいになってて……」
だめだ、うまく説明できない。
いや、こんなことはどうでもいいんだ。
俺がいちばん玲奈に伝えたいことを――。
「詳しいことはわからない。でも、1つだけ確実に言えるのは――」
ゆっくり、落ち着いて、玲奈の目を見て伝える。
「タイムリープする前の世界で、お前は……自殺したんだ。2回も。だから俺は――」
彼女の目から、涙が1粒零れた。
「お前を止めにきた。お前を助けるために、戻ってきたんだ――」
一度溢れ出した涙は止まることを知らず、彼女の頬を濡らした。
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