第2話 E神社の岩屋

 それで、翌日にまたTさんに付き合ってもらって、E神社を訪れたんです。

 私は、地元ということもあって、それまでにも何回か参拝したことはあったのですが、ちょっとこの日はおかしなことがおきました。


 E神社は、徒歩でくまなくすべての宮をまわっても、トータルで3時間あれば参拝できるはずなんです。


 境内には、三つのお宮があるのですが、奥の宮まで行くとしても、片道で1時間30分もあれば、大人の足なら絶対に行ける。


 それが、この日は歩いても歩いても、奥の宮に辿り着かないんです。

 狐や狸にバカされる昔話がありますよね?

 知らずに、同じところをグルグル歩かされているという……。

 まさに、あんな感じでした。



 午前中にTさんと待ち合わせして、奥の宮に辿り着いたのが午後3時ぐらいでした。

途中であまりに奥の宮に辿り着かないんで、昼食を取りましたけど、でも昼食だって売店で買ったものをベンチで軽く食べるだけです。何時間も、のんびり食べていたわけじゃないんです。

 それなのに、どうしてあんなに奥の宮まで時間がかかってしまったのか。

 いま振り返って考えてみても、不思議で仕方ないんですよね。



 しかも、三つのお宮、どこも神様の気配がない。

 話しかけても、答えが返って来ない。

 これは、参拝してはいけなかったのかな、と思いました。



 奥の宮だけは、何かいらっしゃるな、と感じましたけれど。

 前日の、K池と同じで、祀られているご祭神と実際に祀られて、そこに存在していらっしゃる方の気配が違うんです。



 E神社は、それこそ全国的に有名なパワースポットなんですよ。

 K池と同じ、弁財天が祀られていて、また竜神様でも有名です。

 しかし、どちらの神様も気配が感じられない。

 竜神様ではなく、蛇神様の存在は感じられたのですけれど。

 私たちは、歓迎されていないのかな、と思いました。



 神社は、神域ですから。

 そして、日本の神様はもともと祟り神としての側面も持っていますから。

 神域が、表の顔と裏の顔を持っているのは、当然のことだと思います。

 神道でいうところの、荒魂(あらみたま)と和魂(にぎみたま)です。


「神社は、午前中に参拝するとよりパワーをいただけますよ」って書いてあるパワースポット・ガイド本が多いと思うのですが、あれは神様の和魂に参拝するということでもあると思うのです。


 神社によっても違いますし、一概に何時とは言えないのですが、夕方頃から「顔が変わる」神社は多い気がします。

 そういった意味で、ただでさえ歓迎されていない神社で、本来は参拝に向かない危険な時間にさしかかっているのは、わかっていました。



 それでも、仕事でしたから……。すべて回りきろうと思いまして、E神社の一番奥にある岩屋まで行ったんです。

 この岩屋は、富士山と一番奥で繋がっていると言われる有名なパワースポットです。さすがにここは何かしらの収穫があるだろうと思って、向かいました。



 しかし、入る前から、もう怖くて怖くて仕方がないんです。特に、地面が怖くて仕方がない。

 岩屋は二つ、第一の岩屋と第二の岩屋がありまして、特に怖いのが第一の岩屋でした。

 入り口でロウソクを借りて、真っ暗な岩屋に進みました。


 入ってすぐ、足に何か細くて長いものがまとわりついて来る気配があるんです。

 そして、まとわりつかれた足がどんどん冷たく重くなって、動けなくなっていく。

 先ほど感じた蛇神様の気配だと思います。

 Tさんも、私と同じ状態でした。



 Tさんは視るのが得意、私は祓うのが得意だったので、とりあえず走るように二人で岩屋を出て、日の光の下で足にまとわりついたものを私がはずしました。

 そのとき、ふっと「生け贄」という言葉が浮かんだんです。



 Tさんにも、確認してみました。


「岩屋から穴に飛び込んでいくような……、いや飛び込まされているような、そんな女性が見える。彼女たちが、生け贄だったんじゃないかと思いますよ」

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