一年前の夕立

@Kei2180

第1話

夏の風物詩、夕立。

多くの人はこの気象現象に悩まされ、好まないであろう。しかし、僕には特別な思い出がある。


一年前。

8月のカラッとした晴天に大きな入道雲が浮かぶとある日、僕たちは恋をしていた。どこにでもいる彼氏と彼女。同じ部活の先輩と後輩。先輩·彼氏は受験生、第一志望校合格を目指している。後輩·彼女は高校2年生、小説家を目指している。僕たちはそれぞれの目標に向かい努力していた。その日は部活の引退式。14時に会は終わり、僕は彼女と学校から歩いて15分程の大型ショッピングセンターへ向かうことになった。僕はバスを使うつもりでいたが、彼女の提案で歩いて向かうことに。歩いて5分程経った頃、大粒の雨がものすごい勢いで降ってきた。遠くで雷鳴が聞こえ、風も強く吹き雨が横殴りになった。2人は、流れが急になった茶色の川の堤防沿いを少し駆け足で走った。たまたま持っていた1本の傘も役に立たずに2人の制服はあっという間にびしょ濡れになった。ワイシャツは肌に張りつき、靴からは1歩進む度に嫌な感触とグチャという音が。もう傘をさす意味が分からなくなってきた頃、橋に着いた。

その橋で少し留まった。なんとなく。意味をなさない傘を地に置き、彼女に口づけをした。いつもより少し長く、強く。その数秒間、世界には2人だけだった。雨の音と匂い。彼女の唇を感じ、目を瞑ることでより強く感じることが出来た。

再び目を開けると、そこにはずぶ濡れで艶っぽい彼女が。少しはにかむいつもの笑顔を見せる。「愛してるよ」こんな歯が浮く様なセリフがどうして言えたのか、その時は自然と出た。自惚れていたのだろう。


僕はクラスでは地味な方であり、友達も少ない。皆がSNSであげる様な写真は数える程しかない。

しかし、確かにその時、青春はそこにあった。

そう思う。








…その後どうなったと思いますか?

2人は破局。僕は第一志望校に落ち、三流大学へ。友達もいない、まして恋人など出来る気配はない。

彼女は受験生に。しかし、勉強に集中できず、小説ばかり書き、死にたいと毎日SNSで呟いてます。


1年間でこの転落ぶり。

バッドエンド!

(ハッピーな結末を望んでいた皆さんごめんなさいm(_ _)m ハッピーエンドで終わらすのは何か照れくさくて…)




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