犬飼探偵の芳しき失敗

作者 無知園児

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★★★ Excellent!!!

 軽快に流れる文章の読み易さ、登場人物たちのコミカルで、ときにはしんみりと、且つ締めるところはきちんと締める緩急ある会話。
 人として高スペックなのに、探偵としての推理はまるでポンコツ。けれど、真実に対する狂的なまでの誠実さ、犬飼先生は紛れもなく"探偵"と呼ばれる人間なのでしょう。とても面白く読めましたことをここに書き留めます。

★★★ Excellent!!!

探偵街の一角に、看板のないその事務所はある。
訪れる依頼人と来たら"間違って"入って来たか、依頼料の安さかといったそんな事務所。おまけに当の探偵はガスマスクを着けた変態で、依頼は"失敗"するという。
そんな探偵、犬飼を支える助手、薄雪は打って変わって優秀(そして可愛い)なのだからどうしたことか。まさかこちらが本来の探偵なのではと心配になるが、この凸凹コンビが歯車の歯が噛み合うが如く、きっかりと信頼の上で成り立っている。それが非常に愉快かつ爽快。
薄雪を通して綴られる、犬飼という人物の明け透けなさは、仕方のない弟を見守る姉のような、だけどそれだけにとどまらないあたたかみがある。ガスマスクの奥の子供のように純粋なまでの探偵の心を目の当たりにした時、ぱちん、とまるでそろばんの玉が弾かれ、計算を終えたみたいに誰もが舌を巻かずにいられないだろう。
また、大正レトロに飛行バスといったスチームパンクが垣間見える世界が、香り立つ珈琲のように居心地良くほっとする。優しい人も狡い人もお茶目な人も、どこか憎めない人物たちが息衝く物語が、心地好いのだ。

いかにして彼が事件を"失敗"するか、その探偵の心をとくと御覧あれ!

★★★ Excellent!!!

大正のレトロな雰囲気が華麗な、コメディ要素の強い探偵小説です。

犬飼探偵事務所の犬飼探偵は、常に鈍色のガスマスクを着け、外見からしてかなり怪しげ。
おまけに致命的に空気が読めず、誰かとの会話はかなり有能な助手の少女に任せきり。
そうでなければ、依頼人が帰ってしまうような発言ばかりしてしまうから。
しかも並はずれた能力を持つのに依頼は必ず失敗と、
これだけ見ると『ヘボ探偵』と揶揄されるのもおかしくない、と思えてしまいます。

しかし読み進めていくうちに、それが違うと分かってきます。
一話終盤、堂々とした彼の信念はあまりにも鮮烈で、犬飼探偵は確かに『探偵』でした。
有能な助手が、ああも彼を探偵として慕っているのにも大変納得がいきました。

一話完結までさっくり読めるのがありがたいです。
まだまだ物語も続くみたいで、これから二人はどのような事件と出逢うのか、
そして失敗するのかと思うと目が離せません。
続きが非常に楽しみです。