第391話 詮索無用、口外厳禁

 ちなみに少しだけ弁明というか解説をしよう。


 あっさりとダイヤとかルビーを作っているが、これは玉川先輩とか上野毛レベルの魔法使いだからこそ出来るのだ。

 実際ダイヤモンドを錬成できる魔法を使える魔法使いは俺の知っている限り玉川先輩しかいない。

 ルビーだと若干人数が増えるが、それでも2人を含めてこの島全島でも5~6人ってところだろう。


 無論沙知ちゃんは色々承知の上で宝石を指定して材料を渡している。

 決して魔法使いなら誰でも出来る訳ではない。


「そう言えば沙知ちゃんは魔法を使わないの?」

 さっきの怪談と宝石騒ぎで酔いが冷めたらしい三田さんが言ってはならない事を言う。


「私の魔法、知りたいですか……」

 沙知ちゃんの微笑。


「うん、どんな魔法なの?」

「私の魔法は本来は検知魔法で、誰が何処を歩いているかとか何が何処にあるかを調べる魔法です。でも、色々応用は有りますよ。例えば三田先輩、ちょっとこれを見て下さい」


 沙知ちゃんは右手の指を1本立てる。


「え、その指を見ればいいの」

「そうです。では行きますね。貴方は恋人がいるいない別れた1ヶ月2ヶ月3ヶ月原因性格台詞不明性格自分……」


 超早口で色々言っている。

 俺は知っている。これを聞いた時点でもう手遅れという事を。

 30秒程早口言葉のような呪文のような台詞を唱えた沙知ちゃんはにやりと笑う。


「じゃあ行きますね、三田先輩のプロファイルデータ。

 恋人は現在はいない。3ヶ月前に半年付き合った恋人と別れた。なお肉体関係は無かった。

 別れた理由は性格の不一致、具体的には彼が三田先輩についていけないと思ったから。

 今の悩みは専門の数学の単位とダイエット。こんな処でいかがですか」


「えー!何でー!」

「これが私の魔法ですから。あ、心は読んでいないですよ。純粋に先程の言葉に対する反応を分析しているだけです。魔法でですけどね」

 可愛くウィンクしてみせるが、全然魔法は可愛くない。


「ははははは、今日一番怖い魔法だわこれは」

 それでも三田さんは怒らずむしろ納得している。

 まあその反応がわかっているから沙知ちゃんは平気でさっきの内容を喋ったのだろうけれども。


「さて、トリはやっぱり詩織先輩お願いします」

「了解ですよ。では皆様、こちらにお集まり下さい。


 何処へ飛ばされるんだろう。外は雨だけれども。

 そんな事を思いながら俺達は詩織ちゃんに指定された枠内に入る。


「これから行く場所は夜間立入禁止なので静かにお願いします。なお、これから使う魔法は口外厳禁詮索無用で宜しくお願いします」


 おいおい理奈ちゃん。


「では、行くですよ」

 ふっと足元の感覚が失われる。


「到着まで約1分なのです。暫くお待ち下さいなのです」

 あ、これはあかん距離だ。東京より絶対遠いぞ。

 そう思いつつもこうなったらどうしようもない。


 そして着地。きちんと整地された下がある。

 そしてあたりは暗い。


「静かにお願いするのです。足場と柵はちゃんとしているので大丈夫なのです」

 確かに柵があって、その向こう側下方に光る街が広がっていた。


「何万ドルか不明ですが夜景見物なのです」


 見えるのは結構大きな街だ。かなり高いビルがいくつも立っている。

 光っている水面は海だろうか湖だろうか。

 活気があって、そして綺麗だ。


「綺麗ね」

 世田谷が似合わない事を言っている。 

 でも確かに綺麗だと思う。


「でもここって、ひょっとしてハワ……」

「詮索は厳禁なのですよ」

 誰かの台詞は詩織ちゃんに止められた。


「さて、名残惜しいですがそろそろ戻るのです」

 詩織ちゃんの言葉とともに再び浮遊状態になる。


 そして明るい研究室へと俺達は無事戻ってきた。

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