第387話 コスプレデー開催中

 学園祭も水曜位になると中だるみする。


 なので今年の学園祭実行委員が魔技大と合同で企画したのが『コスプレの日』。

 水曜日と木曜日はコスプレ推奨で、各模擬店等でもコスプレ姿だとサービスがあるという内容になっている。

 なお『高専生のコスプレ』、『一般人のコスプレ』は認められないそうである。


 わざわざそんな格好するのも何だかなと思うのだが、どうもお祭り騒ぎ好きは多いらしい。

 コスプレ人口が一気に増えている。

 うち半分近くが魔女の扮装というのはどうかと思うのだが。

 お前らコスプレじゃなくてリアル魔女だろ!


 当然学生会も強制的にコスプレさせられているようである。

 香緒里ちゃんも今朝は黒い長いワンピースに三角帽を持って出ていった。

 いわゆる典型的魔女スタイルである。


 ちなみにジェニーはベルばら系な男装をしてマンションを出ていった。

 あの服はきっと理奈ちゃん御用達の店で作ったんだろうな。


 詩織ちゃんは魔法少女スタイルだった。

 基調色がピンクでステッキがラメ入りだ


「でもまあ、賑やかで楽しそうなのは悪い事じゃない、そう思うのよ」


 現在俺と世田谷は新地研究室の会議用テーブルで昼食中。

 要は学園祭を回るのもいい加減飽きたのである。


 他にテーブルには大学3年生の女子3人。

 目黒さん、三田さん、春日さん。

 新地先生は今週は別の工学系学会へ行っていて不在。

 他は頑張って学園祭を満喫しているらしい。


「そう言えば皆さんはコスプレ祭は参加しないんですか」

「流石にそんな衣装持っていないし、ねえ」


 目黒さんの言葉に2人が頷く。


「私はコスプレって柄じゃないしね」

「お前は存在そのものが黒魔女だろ」


 いつもの服でさえ黒色上下の黒魔女にコスプレなど必要ない。


「そう言えば世田谷さんと長津田君って仲が良いけれど、恋人とかそういうのですか」

 三田さんがとんでもない事を聞いてくる。


「ない、ない。長津田はちゃんと相手いるし」

「黒魔女の相手が務まるほどタフじゃないしな」


「その黒魔女って言うのはあだ名なんですか」


 そう言えば高専側の俺達は大学側の学生とはよく話した事が無い。

 大学3年生は基本的に研究室に来るのはゼミの時間だけ。

 例外的に玉川先輩だけはふらっと勝手に来て怪しげな工作をしていたりするが、他には合同飲み会位しか顔をあわせた事が無い。


「黒魔女ってのは、世田谷使用の魔法の性質と併せた通り名みたいなものだな。これでも高専の専科以外では最強の攻撃魔法使いだし」


「え、じゃあ本当に火とか氷とか魔法を使えるの?」

 世田谷は悪そうに笑ってテーブルの中央を指す。

 ふっと氷の山が出現し、しかもその上から炎が上がり始めた。


「えっ、これって……」

「凄い……」

「危なくないんですか……」


 なお、俺には世田谷の魔法の種が見えている。

 でも一応黙っておく。

 世田谷がふっと笑うとともに氷の山は現れたと同じ位の唐突さで姿を消した。


「まあ、今のは本物ではなくて幻影だけどね。火災報知器が鳴ると危ないし」

「世田谷は一応火水風雷土も使えるけれど、本来は闇系の魔法使いだしな。得意なのは幻影とか精神錯乱とかそっち。レベル的にも世界有数級」

「凄い……」


 世田谷が肩をすくめる。


「でも学内にはもっととんでもないのがいるからね。何なら本物の世界有数級実戦魔法使いを呼んでみましょうか」

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