第386話 言い訳の代価
大塚先輩による展示や研究室概要等の説明の後。
俺と香緒里ちゃんはお馴染み創造制作研究会の喫茶室に陣取った。
今年は2区画半使っているので広さや席数に余裕がある。
「何か修兄に色々先回りされた気分です」
そして香緒里ちゃんがふくれている。
理由はまあ、本人が今言ったとおりだろう。
「いや、まさか雪ヶ谷先生の
これは本当だ。
俺自身そんな話を事前に聞いていなかったし。
知ったのはソフィー経由で本当に偶然だった。
だから状況だけは一応聞いたけれど、それ以上の根回しも何もしていない。
「でもまあ、知らなかったという話は信じてあげます。先輩もそう言ってましたし」
そう聞いて俺はほっとする。
大塚先輩のおかげだ。
まあ事実俺は何もしていないんだけどさ。
それでも香緒里ちゃんの機嫌を損ねたままだと色々落ち着かないし。
「このパフェと明日の差し入れ人数分で手を打ってあげます」
「はいはい」
交換条件は素直に受け入れることにした。
ちなみに香緒里ちゃんが食べているのはこの店で最高額の最高級和風パフェ。
あんこと白玉とみつまめと羊羹と……とまあ色々和風な物が入ってクリームで飾ってある代物だ。
ちなみに俺は白玉団子、あんこ盛りだ。
これにぼたもちを11個は結構出費だが……まあいいか。
香緒里ちゃんの機嫌には代えられない。
ふと柱時計の表示が目に入った。
そこでちょっと気になった事があったので香緒里ちゃんに聞いてみる。
「そろそろ学生会の当番、大丈夫か」
屋上で会ってから既に2時間程度過ぎている。
確か今日は
○ ルイスが斬りまくり大会出場で学生会に出れない
○ 詩織ちゃんとロビーはテレビ局協賛のリアルロボット大戦に出場
○ ソフィーは取材で飛び回っている
で人が足りない筈だ。
「あ、そう言えば……」
香緒里ちゃんは腕時計を見る。
表情が変わった。
「修兄すみません、行ってきます」
見事なまでのダッシュで消える。
それでも皿はきちんと空になっている。
流石だ。
「お、どうした。逃げられたか」
奥から見慣れた顔が姿を現した。
江田先輩、今年も店を休んでやって来たらしい。
「今年は店番は玉川先輩じゃなかったんですか」
「よく考えたらな、あいつに同じ場所で同じ事をしていろっていうの、無理だろ」
「確かに」
玉川先輩は持久力とか持続力とか根性というか、そういうものがまるで無い。
とても器用で頭も良くて物も色々知っているし色々出来るのだけれども。
人の2倍の速度で考え、人の3倍の速度で処理し、人の5倍の速度で飽きて、人の10倍疲労する。
そういう人だ。
幸薄いのもその辺に原因があるのかもしれない。
「それにしてもお姫様、えらく機嫌がよさそうだったじゃないか。最後逃げられたけどさ」
「そうですか。ここの会計と明日のおやつを奢らされましたけれど」
俺にはそうは見えなかったのだが。
「それは照れ隠しだろ。大体お前も薊野も金に困っていないじゃないか、財布も一蓮托生みたいなものだろ実際」
まあそうなんだけどさ。
その辺は黙って肩をすくめてごまかす。
「そう言えば奈津季さんとは連絡取れてますか」
「一応な、パンと製菓両方やるから当分は学校だとさ。向こうである程度店での経験も積みたいって言っていたから、やっぱり2年か2年半は向こうじゃないか……」
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