第385話 筆頭学生による解説

「じゃあ私から紹介しましょう」

 この研究室の学生筆頭にして真の大ボスである大塚先輩がそう言ってくれた。


「まずは先生から。

 雪ヶ谷先生、新進気鋭の准教授と言えば聞こえは良いですけれど、長津田の研究室では別の意見もあるんですよね」


 そう言われたからには答えよう。

「新地先生に言わせると『講師の席欲しさに魂を補助魔法科に売った同期の裏切り者』だそうです」


 雪ヶ谷先生は新地先生と高専及び魔技大で同期だ。

 当時はどっちも魔法工学科専攻。

 なのでお互い色々遠慮ない。


「だから私も新地君の事は保守本流の腰巾着と呼んであげているけどね」

 要するにそういう間柄だ。


「私が大塚、補助魔法科の専科2年です。長津田くんとの関係はまあ、創造製作研究会や田奈先生経由で長津田君に色々無茶な注文をしたクライアントってところでしょうか」


 大塚先輩が俺とこの研究室及び大塚先輩との関係を簡単に説明する。

 

「今は魔法感知器も大分小さく出来るようになりましたけどね。でもあの基礎回路は俺じゃなくて玉川先輩の作品です、本当は」

「当人は『作るの飽きた、面倒い』って途中から全部長津田君に投げたのですけれどね。結局検知データの電気情報化は学生会に入った後も長津田君にやってもらったんです。おかげでデータとして処理できるようになりました」


「という関係なの。なので長津田君もここに誘ったんだけれども、事もあろうに新地君の処に逃げられた訳」

「という訳で、俺もここの研究室はそこそこ知っている訳だ。先生同士が知り合いだからうちの研究室とも仲がいいしな」


 俺、大塚先輩、そして先生の3人での説明が終わる。

 香緒里ちゃんの目が点になっているのはまあ、しょうがないか。

 でも俺もまさかこの研究室が香緒里ちゃんにコナかけると思っていなかったんだ。


「他にも学生会ではソフィーさんにデータ取り手伝ってもらったりしているしね。去年からロビーさんに開発も手伝ってもらっているけれど。私以外にメカわかる人がいないしね。長津田君を取り損なったし」

「でもまさか、薊野を取ろうとすると思わなかったな」


 俺は学生会外では香緒里ちゃんを薊野と呼ぶ事にしている。


「だって申し訳ないけど心理系の魔法が使えてメカがわかる学生なんて、うちとしてはどうしても欲しいじゃない」

 雪ヶ谷先生、本音だだ漏れ状態の説明だ。


「長津田が関係者という処が問題だけどな」

「煩いこのお祭り男」

 俺と池尻の掛け合いは大目に見て欲しい。


「他にも助手の先生1人、専科が私以外に3人、学生が今の3年から5年まで15人いるんですけれどね。今はお祭りだから受付担当を除いて皆あちこち回っています。

 でもまあ宜しければ、昨今の研究成果とか課題の内容についての展示もしてありますので見てやってくださいな。

 結局決めるのは薊野さんですから。研究室からの希望より学生からの希望が優先されますからね」


 さらっと大塚先輩がまとめる。

 流石この研究室の真の大ボス。

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