第379話 ありがとう

 いやあ、2人とも景気良く飲みやがった。

 もう足取りもふらふらである。


 色々食べたけどそれ以上に2人が飲んだ。

 サングリアだけで4杯以上は飲んでいる。

 他にも色々カクテルとか。


 ビールも一番小さいのを頼んだけれど、世田谷は1口飲んだだけで、

「苦い、不味い」

とほざきやがった。


 結局いろいろ試した挙句、やっぱりサングリアが口にあるようで最後に1杯ずつ追加する始末。


 料理もバーニャカウダとかつまみ系が多かったし注文しまくった。

 そして注文したほとんどの料理は2人の腹に収まっている。

 俺は野菜スティックをかじりながら2人の話に頷いていただけでほぼ終わり。

 まあそれはともかく。


 ご機嫌モードの風遊美さんと説教モードの黒魔女をコントロールしながら何とか徒歩7分の地下道をホテルに向かう。

 幸い2人共えずいたりはしていない。

 風遊美さんは微妙にまっすぐ歩けていないが、地下道オンリーなのでセーフだ。


 『女の子2人酔わせて何する気だ』という通行人の視線に耐えながら何とかホテルに到着。

 長い廊下とエレベーターを経由してやっと部屋に到着した。

 それぞれのベッドに2人を転がしてやっと一息。


 2人共無事ベッドにたどり着いた途端、熟睡始めやがった。

 着替え等はまあ、本人達が意識を回復したら勝手に自分でやるだろう。

 そこまで責任は持っていられない。


 さて、夜食を買い出しに行くか。

 俺はほぼ野菜スティックしか食べていないのでひもじいのだ。


 エレベーターを待っていると、何故か香緒里ちゃん達4人がやって来た。

 外出する格好をしている。


「あれ、何処か行くの」

「北海道といえばセコマなのです。夜のコンビニ買い出しなのです」


 おいおいと思ったが、一緒の1年生2人もいやいやという感じではないしまあいいだろう。


「なら俺も付き合うか。実は腹が減って買い出しに行く処なんだ」

「なら同行を許すのです。荷物持ち兼財布係としてついてくるのです」


 おいおい。

 まあいいかと思いつつ一緒にホテルの外へ出て歩いて行く。


「修兄の同室の2人は?」

 香緒里ちゃんのもっともな質問。


「居酒屋で飲んだくれて部屋で寝ている。2人共20歳過ぎだからな」

 香緒里ちゃんは頷く。

 納得してくれたらしい。


「それにしても香緒里ちゃん、いつも有難うな」

 え、何をという感じで香緒里ちゃんが振り向く。

 まあそうだよな、と俺も思う。


「いや、何となくそう思っただけ」

 そう弁解しつつ俺は思い出す。


 ついさっきの飲み会での世田谷の言葉。

 もし俺が相手を誰か決めた際にどういう言葉で伝えればいいか聞いた時の台詞だ。


『まあ今の環境でベッドインなんてのは面白すぎて無理かな。

 冗談はさておいて、今の長津田との関係なら伝えるべきものは3つ。

 これまでどうもありがとうという感謝。

 自分も好きだという今の事実。

 そしてこれからもよろしくという挨拶。

 そんなところじゃないかと私は思うな』


 今日は伝えられないけれど、いつかちゃんと伝えよう。

 そう思いながら俺は夜の札幌の街を歩いて行く。


 

 翌日は各自自由行動で夜はジンギスカン。

 次の日は空港の売店で散々色々買い物をした後、詩織便で届けてもらったバイクで北海道を回るというロビーとお別れ。

 飛行機で東京へ帰り、自動車教習所へ通うという香緒里ちゃんとお別れ。


 そして更に飛行機で聟島へと帰り、そしていつもの騒がしい日常へと戻る事となった。

 さあ、まずは今いる面子でバネ工場強制労働だ!

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