第378話 俺だけ二十歳未満です
世田谷がちらっと時計を見る。
午後7時ちょうど。
「さて、そろそろ晩御飯を食べに行かない。札幌ラーメン、海鮮系、肉系何がいい」
世田谷はさっきと口調を変えてそんな事を言う。
切り替え早いなこいつ。
「俺は……特に思いつかないな」
「私も昨日まで色々食べたし、何でも」
「うーん、何でもいいは答えじゃないんだよな。あ、この面子なら大丈夫かな」
黒魔女はにやりと笑い、ホテル備付の資料のファイルをささっとめくる。
何か参考になる事項が書いてあったらしい。
「よし、何でもいいと言ったからには異義は許さないからね。行くわよ」
世田谷に追い立てられるように部屋を出て、自信ありげに地下を歩いて行く後を追うこと約7分。
駅ビルの地下にあるスペイン料理の店だった。
「何故スペイン料理?」
「ぐだぐだ言わない」
入ってみた感じ中の雰囲気は悪くない。
それにしても何故北海道でスペイン料理なのかはまだ謎だ。
メニューを見ながら世田谷は俺に聞く。
「長津田は何月生まれ?」
「2月だけど」
「残念、ソフトドリンクか。なら自分で選べ」
メニューを渡された。
「何だよ一体」
「後で理由は言うわ。あと風遊美先輩は食べ物適当に選んで下さい」
黒魔女、仕切る。
ある程度メニューが決まったところで店員さんを呼ぶ。
「それじゃサングリアの白を2つとオレンジジュース。あと海のパエージャ2人前とゴルゴンゾーラのペンネ、季節野菜のバーニャカウダ、砂肝のガーリックオイル煮、以上で」
結局ほぼ全部世田谷主導で注文する。
店員が注文を繰り返して確認し、伝票をつけて去っていく。
「実はね、折角20歳になったのでちょっと飲みに行きたいなと思ったのよ。でもビールって1回しか飲んだこと無いけど苦くて美味しくないじゃない。
で、思い出したのがあのマンションの冷蔵庫でいつも冷えている、通称奈津希さんの清涼飲料水な訳。
あれ凄く美味しいけれど調べたら普通の飲み屋には無いっぽくて。
スペインの飲み物らしいから、スペイン料理の居酒屋があれば行って飲んでみたいって思っていたの」
成程な。
あの通称奈津希さんの清涼飲料水は、今では由香里姉あたりが時々愛飲している。
月見野先輩や風遊美さんにも好評だ。
ただ売っている店があまり無い。
当然ハツネスーパーにも売っていないので通販で買うわけだが、通販でも扱っている処は少ない。
確かに普通の居酒屋には無いだろうなと俺も納得する。
「という訳で今日は飲むよ。どうせお代は長津田持ちだし」
厳密には会社持ちだ。
精算したり処理したりするのは俺だけどな。
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