第362話 何でもヒントになるものなのです
しょうがない、ゼミ同僚もそう聞いているんだし説明してやるか。
「今回の杖の試みの1つは魔法陣の回路化だ。
色々な昨日を持つ魔法陣を機能毎にチップ化して組換や複合化し易くする。そうすれば任意の性能の杖が組みやすくなるし、複雑な積層魔法陣も簡単に組めるだろ。
これはその基礎となる積層魔法陣の基本のチップだ」
「うーん、わからないわ」
「電子回路みたいな物なのですか」
詩織ちゃんは何となくわかってくれたようだ。
まあ魔法工学科だしな。
「そう。ただ論理回路というよりはオーディオ等の増幅回路に近いかな。アンプ回路や電源回路等のチップと同じように、魔力を増幅したり安定化したり」
「イメージとしては分かるのです。でもメリットがよくわからないのです」
「メリットは色々あるさ。例えば設計が楽になるとか。チップの組換で医療用も作れるし攻撃魔法用にも出来る。拡散にするか収束型にするかだってをチップを変えるだけで済む。
いずれは論理回路も取り付けて、使用する状況毎に最適な性能に変化する杖にするつもりだけどな。そうすれば用途毎に違う杖を用意する必要も無くなるだろ」
「私や風遊美先輩のヘリテージと同じ方式では駄目なのですか」
「ヘリテージは強力すぎて、逆に細かい作業するには不向きだろ。例えば集団一斉治療とかをしない限り、医療用としてはテュルソスの方が使い易い筈だ。詩織だってヘリテージ使ってICチップの中を修理しろと言われたらやりにくいだろ。
そういった出力の適正化なんてのもチップ化すれば視野に入ってくる。チップを量産すればコストも下がるしな」
「成程、使用状況に合せて別々の杖を持つのと同じなの……ん、状況に合わせて別々……ちょっと待って下さいなのです」
突如詩織ちゃんが目をつむり、考え込んだ、
手がキーボードを叩くように動いている。
世田谷が何か言おうとしたのをルイスが手で制した。
そして世田谷に目で合図する。
ちょっと黙って様子をみよう、という意味だろう。
俺と話している時に、詩織ちゃんは何かを思いついたらしい。
ルイスが俺の机からメモ用紙とボールペンを取って詩織ちゃんに渡す。
詩織ちゃんはそれを受取り、何やら記号や図をざざっと書いていく。
その意味は俺にもきっとルイスにも世田谷にもわからないが、何かその図形等で考えをまとめているらしい。
そして。
詩織ちゃんは顔を上げ、俺の方を見る。
「修先輩、ジャンケンの10回勝負をお願いしたいです」
明らかに詩織ちゃんは何かに気づいたようだ。
ならば。
「風遊美さんを呼んでこようか?」
「まずは修先輩で試すです」
よし、ならば手くらいは貸してやろう。
「それでは行くですよ、せーの!ジャンケンポン!」
グー対チョキ
パー対グー
パー対グー
グー対チョキ
チョキ対パー
パー対グー
パー対グー
グー対チョキ
パー対グー
パー対グー
見事に俺の完敗だ。
という事は……
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