第361話 ここは俺の部屋なんだけど
結局詩織ちゃんもルイスも世田谷姉妹も泊まり込んだ翌日。
今日の天気は雨。
朝食と言うには豪華過ぎる刺盛りと焼き魚煮魚を食べた後は温泉旅館モード全開だ。
カラオケと卓球の他毎度お馴染みソフィーの怪しげなゲームとか、まあいつも通りだ。
その中で詩織ちゃんとルイス、そして世田谷の3人はサイコロを振ったりジャンケンをしたりして詩織ちゃんと色々考えている。
しかし何故それを俺の部屋でやるのだろうか。
理由は一応聞いてはいる。
「一番静かで、締め切っていても問題なく、遠慮なく使える部屋だから」
だそうだ。
ちなみにルイスだけは申し訳無さそうな顔をしていたが、他2人は当然だろ、という態度。
詩織ちゃん本人の部屋もすぐ隣なのに。
仕方ないので俺はパソコンで杖の設計をしつつ、詩織ちゃん達を見守る形になる。
ついでに時々お茶とかプリンを供給したりしながらだ。
「サイコロ相手は出来るようにはなったけれど、人相手だと上手く行かないのですよ」
「方向はあっているけれど、何か足りないんでしょうね」
「ただ未来方向を見るだけじゃ確定出来ない訳か」
どうも近くまでは行っているようだ。
ヒントを言いたくなってしまうけれど、風遊美さんには禁止されているしな。
なので何も聞いていないふりをしてCADを操作して杖の設計に励む。
この杖、通称プレ・プログレスには新理論のうち2つを組み込む予定。
なお杖本体は増幅部のみを取り外して交換できるように設計する。
こうすれば別の理論に基づく増幅装置を作る際、杖本体を流用できるから。
アンテナ代わりの魔力導線も取り外し可能な仕様にしている。
まあこのあたりの効率的な設計は俺より恩田君の方が上手いのだけれども。
今回増幅に使うのは俺の新理論その1とその2。
どちらも儀典魔術系統の理論から発展させた技術だ。
ついでに制作にも新しい考え方を導入している。
積層魔法陣や増幅回路をチップ化及び回路化して設計効率を向上するとともに仕様変更を容易にする。
要は魔法陣を電子回路化したようなものだ。
今回の試作品は機能ブロックの組み換えにより仕様を変化させる仕様だが、これが上手く行けば次は簡単なプログラムが組めるような試作品を作る予定。
いずれは使用する魔法に応じて自動で杖の特性自体を変化させられるようにする予定だ。
でもまずは基礎を固めないとな。
超小型積層魔法陣と魔力導線で構成されるチップの仕様を取り敢えずラフで作成する。
当分は市販ブレッドボード等で試作回路を組む予定なので、汎用IC等と同じような仕様でサイズやピンを設計する。
チップも基本単純増幅、可変増幅、魔力使用増幅等いくつか設計して……と。
ふと気づくと3人に囲まれ、後ろから作業と画面をじっくりと見られていた。
「何か訳わからない物作っているね」
「支援魔法の魔法陣に見えるのだが、よくわからない」
「これは何の魔道具なのですか。サイズ的にもよくわからないのです」
おいおい。
「詩織の新魔法を考えているんじゃなかったのか」
「煮詰まったので休憩中」
世田谷がそう言って、そして続いて俺に質問する。
「これって次にゼミで発表する例の新理論試作品?にしては杖には見えないわね」
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