第359話 風遊美さんの宿題(2)

「どうですか、見えましたか」

 風遊美さんが詩織ちゃんに聞く。


「まだ見えてない。まだ見えていないのです」


 俺の魔法でも何も感じなかった。

 わかるのは風遊美さんが魔法を発動した事だけ。

 その魔力が何処に作用したのかは俺の魔法では感知できなかった。


 そしてそれこそが俺の予想を裏付ける。

 ただそれを俺が実証する方法は無い。

 おそらく空間操作系の魔法使いでないと見えないし使えない方法だろうから。


「1つ聞いていいですか」

 世田谷が風遊美さんに尋ねる。


「直接的な回答でなければ」

「鷺沼先輩は今使った魔法、どれ位前から使えたんですか」


 風遊美さんは軽く頷く。


「ついさっきからです。まさか空間魔法でこういう事が出来るとは思っていませんでしたから。そういう意味ではやっぱり奈津希って怖いですよね」


 おいおい、ぶっつけ本番かよ。

 でも何となく俺も、そして質問した世田谷もきっとそれに気づいていた。

 つまり風遊美さんは俺達に相談を受けてから今の魔法を編み出したのだ。

 俺達の持っていた情報だけで。


「では、次の勝負は明日です。それまでのんびり考えて下さい」


 そう言って風遊美さんは立ち上がり、そのまま客間の方へ消えた。

 それを見送ってから、世田谷はため息をつく。


「何かやっぱりとんでもないわよね。あれだけのヒントで未来予知の魔法を作り出すなんて」

「奈津希先輩と風遊美先輩は全くタイプが違うのに、こういう時はツーカーなんだ。僕達には全くわからないんだけどな」


 世田谷やルイスの言葉に、俺はあえて何もコメントしない。

 俺にも何となく風遊美さんがどんな魔法を使ったのかわかるような気がしたからだ。

 そしてじゃんけんという形式にした理由も何となく想像がつく。

 その辺は後でこっそり風遊美さんに確かめてみよう。


 一方、詩織ちゃんはまだ無言で考えている。

 本当は俺もヒントを言いたいのだが、俺の予想が正しいかまだ答え合わせをしていない。

 それに俺がヒントを出す事自体も風遊美さんに禁止されているし。


「ちょっと部屋で作業してくる」

 俺は3人に断って自分の部屋へ。


 扉を閉めたと同時に背後に気配を感じた。

 1人じゃない、2人だな。


「答え合わせですか」

 俺は振り向かずに言う。


「修さんは気づくと思ったんです。やっぱりわかりましたね」

 風遊美さんだ。

 振り返るともう1人は香緒里ちゃんだ。


 3人で俺の部屋の小テーブルを囲む。

 椅子は2つなので俺はベッドに腰をかけているけれど。


「香緒里ちゃんも気づいたんだな」

「その前に世田谷先輩と詩織ちゃんが話していたのが聞こえましたから」

 成程、俺より早く気づいていた訳か。


「俺は風遊美さんにヒントを出してもらうまで気づかなかったな。香緒里ちゃんに負けたな」


 風遊美さんが微笑む。

「あれで気づけば充分です。向こうの部屋の3人にはもう少し魔法の方向性や組み立て方を考えてもらいましょう。自分で自分の持ち魔法を整理して新しい魔法を開発する訓練をしておけば、今後別の壁にぶつかった時にも役に立つと思うのです」


 風遊美さんが言っている事は俺にもよく分かる。

 実際風遊美さんと奈津希さんのおかげで俺も攻撃魔法や治療魔法に準じる魔法を使えるようになったしな。


「じゃあ答え合わせをしましょうか。でもその前に確認をいくつかしていいですか」


 風遊美さんは頷く。

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