第358話 風遊美さんの宿題(1)
「そうですね。奈津希の事ですから解けない問題は出さないと思います」
詩織ちゃんに状況を聞いた風遊美さんはそう言いきった。
「でも色々攻めてみたけれど、どれも駄目だったのです」
風遊美さんは頷く。
「今のままの詩織さんでは無理でしょう」
風遊美さんは少し考える。
そして。
「ちょっと待って下さい」
風遊美さんはそう言って客間に入り、杖を持って出て来た。
杖は例のヘリテージ3号だ。
風遊美さんは杖を軽く構えると、何か魔力を放出させている。
何かを試している感じだ。
俺達は黙ってそれを見ている。
やがて風遊美さんは軽く頷き、俺達の方を見た。
「これから使う魔法はかなりの魔力を消費します。ですのでこの杖を使わせてもらいます」
「予知魔法ですか?」
世田谷の質問に風遊美さんは首を横に振る。
「結果としては同じですが、あくまで空間操作魔法の応用です。
さて、詩織さんにはこれから私とじゃんけんをしてもらいます。勝負は10回。一度でも勝つか引き分けになったら、この魔法の使い方を教えます。ただこの魔法は魔力をかなり使うので、1日に一度しか勝負はしません。
もう一度言いますが、1日に勝負は1度です。1度の勝負で10回連続のじゃんけん。なので準備ができたら言って下さい」
大技を使うからよく解析してね、とあからさまに言っている。
ただ、じゃんけんか……
風遊美さんがこれから使うのは空間操作魔法の応用。
そう自分で宣言している。
つまり詩織ちゃんでも使える可能性が高い魔法という訳だ。
あと、予知魔法ではないが結果としては同じとも言っていたな。
それがじゃんけんで効果を出すというのはどういう理屈だろう。
じゃんけんで確実に勝つには未来予知を使うか相手の出す手を読心魔法で読むか……
それがどう空間操作魔法と結びつくか。
あ、待てよ、空間とは、つまり……
風遊美さんはふっと笑う。
「修さんは気づいても言わないで下さいね。今回は詩織さんに考えてもらうつもりですから。でも、特別におまけとして世田谷さんやルイスさんに手助けしてもらってもいいですよ」
なので俺は何も言わない。
詩織ちゃんが自分の杖を取り出した。
解析魔法と何か空間魔法らしきものを同時に発動する。
縦横高さの俺が感じる世界に伸びる立体方眼紙のようなものが一瞬見えた気がした。
恐らくは俺が見えないし感じられない方向へも座標軸や方眼が伸びているのだろう。
見えない部分すら解析してしまうかなり強力な解析魔法だ。
同時に世田谷も解析魔法を展開する。
世田谷の魔法は残念ながら俺にはよくわからない。
発動したのをただ感じるだけだ。
「風遊美先輩、お願いするのです」
俺もこっそり解析魔法と審査魔法を同時発動する。
俺の魔法ではきっと何も感知できない。
でも感知できないのも結果であり証拠でありヒントになる。
「では行きます。私が勝っている限り同じテンポで連続して行います。では!」
「ジャンケン、ポン」
グー対パー
グー対パー
チョキ対グー
パー対チョキ
チョキ対グー
グー対パー
パー対チョキ
パー対チョキ
チョキ対グー
グー対パー
風遊美さんの完勝だ。
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