第351話 追加は了承したけれど

「漁船が工房前から離陸したれす。もうまもなく着くれす」

との事なので俺は立ち上がり、客間の掃き出し窓を全開にする。


 すぐに見慣れたけれど違和感たっぷりの代物が学校上空からこっちに向かってくるのが見えた。

 ルイスの操船で鮮やかにスピードを落として着陸する。

 何時見ても色々シュールな風景だ。


「どうだった」

 結果はわかっているのだが一応聞いてみる。


「ちょっと獲りすぎた。残りは工房の冷蔵庫に解体済みで入っている」


 そう言いつつルイスは前に巨大アジの開きをつけ込むのに使ったトロ舟を重そうに持ってくる。

 解体作業を一通りやって、中身をトロ舟に入れてきたらしい。


 その後ろでロビーも同じようにトロ舟を抱えている。

 更にもう1個トロ舟を女性陣で抱えている。


「他に荷物は」


「これで大丈夫ですわ」

と理奈ちゃんから返事が返ってくる。


 早速台所は戦場状態になる。

 と言ってもスペースの都合でキッチンで戦っているのは香緒里ちゃん、ジェニー、ソフィーの3人。

 他は手を洗って大広間でダベリング。

 ちょうどいいので世田谷姉妹を紹介する。


 ルイスは世田谷を見るなり、

「いつもお世話になっています」

と挨拶したので、やはり面識があるようだ。


 エイダちゃんが学生会に入るのも問題無さそうだ。


「もう少し早ければ、今日の釣り大会もご一緒出来たのですけれど」

「まあどうせ今日は泊まって宴会していくんだろ」

「私も1年生です。補助魔法科の日吉美雨と申します」

 という感じでもう普通に話をし始めている。


 と、ルイスが俺に何か言いたそうな顔をしている。


「どうしたルイス」

 端っこに寄って聞いてみる。


「修先輩は世田谷先輩と知り合いなのか」

「5年で入った研究室の同僚だ。何でだ」

 ルイスは何故かそこでうんうんと頷いた。


「攻撃魔法科の方で年度末位に色々あったらしいと聞いた。魔法工学科が反則技で優秀な学生を引き抜きいたという噂も聞いたが、事実だったんだな」

「おかげでうちの研究室の男3人で賄賂代わりの杖を大量生産する羽目になった。ただこの件はオフレコな」


「了解した。確かに助教以上の杖が皆新型になっていた。それもこの関係だった訳だ」

 ルイスは何か納得できたという感じで頷いている。


「世田谷先輩は別の方向から強さを求めたんだな」


 それはどう言う意味だろう。

 だが何故かこの時の俺はルイスの言葉の意味を聞き損ねてしまった。

 何かルイスの言葉と雰囲気に色々な意味がありそうな気がしたのに。

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