第350話 元々俺は雑用担当
「折角のお客様なので美味しいお菓子なのですよ」
きっととんでもない処まで行って買ってきたのだろう。
「今日はリリエンベルグのケーキなのです」
そう言っていかにもケーキという白い箱を取り出す。
香緒里ちゃんがダッシュでキッチンから小皿とケーキフォークを取ってきた。
「まずはお客様から好きなのを選ぶですよ。ここのケーキ屋は基本的にどれもお薦めなのです」
「1つ聞きたいんだけど、ケーキ屋なんてこの島にないよね」
世田谷さんが俺に尋ねる。
「深く追求しないでくれ。基本的に学生会は常識が間違っている奴が多いんだ」
「買ってきた訳か、本土で」
世田谷も察してくれたようだ。
何度も対戦しているから詩織ちゃんの能力も特異性も充分わかっているのだろう。
「神奈川の新百合ヶ丘のお店なのですよ。癖が無いので万人向きだけど間違いないお店なのです。特にアレルギーが無いですよね」
エイダちゃんはちょっと考えて、イチゴのタルトを選ぶ。
そして次に箱を回された世田谷が茶色と白が交互に乗っているケーキを選ぶ。
詩織ちゃんはロールケーキ、香緒里ちゃんはザッハトルテ、俺はチーズケーキだ。
もう1個一番上がピンク色で層が色々重なったケーキが残っている。
「ジェニーも呼んでくるです」
詩織ちゃんがジェニーの部屋に入り、そして案外簡単にジェニーが出てくる。
製作中は鉄の集中力のジェニーだが、食べ物で釣ると弱いようだ。
「あれ、お客様れしたか」
というので簡単に状況を説明。
そしてお茶会が6人で再スタートする。
「そう言えばジェニー、ルイス達の方は状況わかるかい」
「少し釣りすぎて学生会工房で作業をしているようれす。学校中に回すほどは釣れていないので、ある程度捌いて向こうの大きい冷蔵庫に入れたらこっちに向かうようれす。予想到着時間あと40分位れす」
相変わらずジェニーの魔法は色々便利だ。
「とすると、もう御飯をたき始めた方がいいでしょうか。工房で捌いているならこっちへ来てからは早いですよね」
「そうだな。なら米はやっておくから学生会についての説明宜しくな」
俺はチーズケーキ3分の1のところで立ち上がり、キッチンへ。
何せ3升つまり30合の米を研いで炊飯器にセットするにはそれなりの腕力が必要だ。
米だけで4.5キロ。水を入れたら10キロをこす。
だから今では炊飯関係は男性3人か鈴懸台先輩の仕事になっている。
まあいつもは3升フルには炊かないけれど、今日はおかずが美味しそうだしな。
ついでに大鍋を出して、刻んである目盛りのところまで熱湯を入れてコンロにおいておく。
「汁用の鍋とお湯もセットしたから、到着してからでいいんで頼むな」
どうせ腹を空かせて帰ってくるだろうから、準備だけでもしておいた方がいい。
本格的な料理は夜に回すとしても、だ。
「出来れば冷蔵庫の乾燥海藻を一袋とだしパック2個を入れておいてなのれす。そうすれば味付けだけで汁になるのれす」
「ほいほい」
「何か長津田、こき使われているわね」
「本来はこの家の雑用担当だからな」
そう言いつつジェニーの命令通りに乾燥海藻とだしパックを鍋に放り込んでおく。
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