第347話 確かに妙な部屋だけど
ほぼ10分後、インタホンが来訪者を告げる。
出ると画面上には世田谷の姿。
「良かった、長津田が出てくれて。ここから先はどうするの」
「今入口を開ける。入ったらエレベータで10階に来てくれ。エレベータを出たら見える位置で待っている」
俺はそう言って表ドアを開くスイッチを押す。
「ありがとう」
そう言って世田谷が入ったのを確認してインタホンを切る。
紅茶の葉っぱ入りポットに熱湯を注いで、それから玄関ドアを開け外に出る。
ちょうどエレベータの階数表示が動いているところだった。
手前のエレベータが10の表示で止まり、ドアが開く。
もう研究室で見慣れた黒の長髪が出てきた。
すぐにこっちを見つける。
「何か凄いマンションね。超高級な感じがする」
まあ確かにこの島有数の高級マンションだけどさ。
「色々事情があってさ」
そんな感じで入ってきて、そして。
「なにこれ、この温泉っぽい暖簾」
いきなりそこで引っかかる。
「深く追求しないでくれ。色々あってさ」
「そして何よこの間取り。個人宅にこんな大広間あるの始めてみたわ」
まあそうだろうな、と俺も思う。
「普段は学生会関係者のたまり場だしさ。多人数で集まれるようにしたんだ」
「それにどうみてもカラオケセットと卓球セットがあるのは気のせいかしら」
「それも学生会関係者の宴会用。まあ深く追求しないでくれ。ここまで温泉旅館化が進んだのは最近なんだ」
そう言いつつ俺は紅茶入りポットとカップ、解凍済みシュークリーム入りのお盆をキッチンから持っていく。
「座卓しかないのはまあ勘弁してくれ。それで何の用だ?杖の関係って書いてあったけれど」
「それも1つあるんだけどね。後は……香緒里さんか、あと出来ればルイス君か詩織ちゃんがいないかしら」
何だろう。
「香緒里ちゃんと詩織ちゃんはいるけど、今は風呂中だな。もう少ししたら出てくると思うけれど」
「ふーん」
そう言って世田谷はあたりをきょろきょろする。
「そう言えば今日は人がいないわね」
「今日は海で釣りをしているんだ。あと2時間もすれば帰ってくると思う」
「あの飛行漁船で」
学生会が飛行漁船を持っていることは周知の事実だ。
「そう。大物狙いって言っていた」
「何か面白いものが釣れるといいわね」
そんな事を話している間に客間の扉が開き、香緒里ちゃんと詩織ちゃんが出てきた。
そして詩織ちゃんがこっちをみてうっ、という顔をする。
「出た、黒魔女!何用なのですか!」
黒魔女?ああ世田谷さんのことか。
そう言えば世田谷さんも詩織ちゃんの事を知っているようだったな。
「世田谷さんは今の俺の研究室の同僚だ。最強の魔道具作りを目指す仲間ってとこだな」
「うーん、味方なら仕方ないです」
詩織ちゃんは何か微妙に残念そうに言う。
「詩織も世田谷さんの知り合いなのか」
「現時点において学内最強最悪の敵なのです。異様に発動が早くてまとわりつく嫌らしい暗黒魔法を使うのです。ルイスの天敵なのです」
成程な、そういう知り合いな訳だ。
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