第342話 聟島温泉営業中?(1)
夜8時。
マンションに帰ると、想像以上に部屋が温泉旅館化していた。
まず入ると玄関とLDKの境に紺染めの暖簾が下がっている。
そして折りたたみテーブルが卓球台モードになっていた、浴衣姿の女子が卓球している。
更に部屋の反対側ではカラオケ大会になっていて……
そして全員浴衣に羽織姿。
ご丁寧に棚にさるぼぼとかいかにもという民芸品も並んでいる。
スリッパまでいつの間にか和風のイグサ仕様になっているし。
ここは確か俺の日常の住まいだよな。
俺は今朝同じこの部屋を出たんだよなと再確認したくなる。
ただ部屋内にいる面子は間違いなくいつもの面子だ。
若干2名知らない女子がいるけれど想定内。
「あ、修兄、おかえりなさい」
そう言う香緒里ちゃんも浴衣姿だ。
「どうしたんだ、これ」
「理奈が注文したのが今日届いたんです。全員分プラスアルファあります。修兄のも」
うん、服装系でこういうおいたをやりそうなのは理奈ちゃんだよな。
「で、このスリッパと暖簾は」
「これも一緒に注文したそうです。あと露天風呂も少し改装中です」
うーん、そのうち聟島温泉とでも看板出そうか。
そう思いながら部屋に入ろうとして、知らない顔2人がこっちを見ているのに気づいた。
とりあえず挨拶しておこう。
「どうも初めまして。前学生会長で魔法工学科5年生の長津田です。ここのの南西角の部屋に住んでいるので今後結構顔を出すと思います。どうぞよろしく」
「あ、私は補助魔法科1年の日吉と言います」
「私は同じく補助魔法科の綱島と申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ宜しく。色々変わったのが多いけど大目に見てやってくれ」
「変なのとは何ですか、変なのとは」
おなじみの声が聞こえた。
「お前だ。変なのの代表取締役監査担当」
「変なのの前代表兼番頭に言われたくないのです」
「魔法だけでフランスまで行くような常識外に言われる筋合いはない」
「それを可能にしたのはどこの変態なのですか」
台詞ほど口調は激しくない。
まあいつものご挨拶という奴だ。
室内をざっと見回していない人間を確かめる。
由香里姉達は今頃大学の新歓だろうから、他にいないのは……
「ルイスやロビーは帰ったのか」
風遊美さん以下の女子連は全員揃っている。
「露天風呂が男性時間帯なので、今ゆっくりしています」
お、ついに男性女性で時間をわけたか。
これは大きな進歩だ。
「お、じゃあ俺も入ってこようかな」
「夕ご飯は大丈夫ですか」
「今日は研究室の新歓で食べてきた。ありがとう」
香緒里ちゃんに礼を言って温泉卓球中の風遊美さんとジェニー、カラオケ中のソフィーと愛希と理奈に軽く礼をして自分の部屋に入る。
しっかりと俺の机上にある浴衣を一応手にとって、そして服を脱いで露天風呂へと向かう。
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