第27章 学生会は卒業したけれど
第336話 引退したのでお引っ越し
4月になって学校帰りに通う場所が変わった。
もう学生会役員ではないので学生会の部屋は行きにくい。
工房の方も同様だ。
工房の方にある俺の占有物はけじめとして全て引き払ってある。
引き払った専有物の移動先は魔法技術大の工学研究室棟1階の最南端。
新地研究室だ。
新地先生は元々大学の方の田奈研究室の助教で高専の方でも講師をしていた。
魔法工学科の実習系の課題ではお馴染みな先生だ。
田奈先生は海外出張だの何だので色々席を開けがちなので、代行で授業をすることも多かった。
そしてこの4月、新地先生はめでたく准教授に昇任、正規に新地研究室が発足した。
ただし高専の方は事実上席だけ状態で、メインの研究室は大学の方だ。
そして新地先生は俺の卒業研究の担当教官。
「長津田も学生会の方を引き払うなら僕の研究室の方へ来ないか。出来たばかりだから誰もいないけれど、広いし色々揃えているよ」
という先生の誘いに渡りに船と移動させてもらったのだ。
移動してみると流石に田奈先生直系らしく、研究室の癖に半分工場化している。
魔法仕様の万能加工機械のほぼ新型が部屋の奥を占拠しているし、某米国製高級工具メーカーのでっかい赤いワゴンの姿も見える。
なお本棚は1つと少なく、しかも中の本も最小限。
これは書籍類は全て解体して
裁断機と高速両面スキャナといういわゆる自炊セットもちゃんと置いてある。
「後期から大学の学生も所属する予定だけれど、それまでは高専生しか来ないから好きに使っていいよ」
という許可も得ている。
ちなみにここ所属の高専生は俺の他に等々力君と恩田君と高井戸君と世田谷さん。
このうち世田谷さんだけは攻撃魔法科で他は魔法工学科だ。
等々力秋良君は上野毛遥輝君と並ぶ学科内の親友にして最大のライバルで、恩田日佐人君は俺亡き後の創造制作研究会に残る最後の同学年。
高井戸悠君は物作り型自由人というのが一番ふさわしい感じ。
そして紅一点の世田谷美南さんは……攻撃魔法科の筆頭にして闇魔法使いという変わり種。
本人の希望で無理やりここに所属したという形で、決定までに一悶着どころではない騒ぎがあった模様だ。
なおその決定過程で、創造製作研究会の最新試作杖「オフィウクス」や「グラウコーピス」が他学科の助教以上にに横流しされたという噂がある。
そして、それが事実であることを俺はある事情から知っている。
ちなみに横流し用の杖を設計したのは恩田君だ。
基本は玉川先輩設計系統の杖だがかなりの部分は恩田君による再設計の手が入っている。
なおこの研究室、表看板では魔法制御科学研究室となっている。
他には魔法生体工学とか魔法制御工学、魔法基礎工学や魔法基礎理論や魔法情報学という感じ。
魔法制御工学はうちの研究室と名前が似ているが、
○ こっちは「魔法を制御する」
○ 向こうは「魔法で制御する」
と中身が大きく違っている。
なお魔法制御工学室にはもう一人の俺の親友にしてライバル上野毛遥輝君が所属している。
ロボット等も今の段階では魔法制御工学の担当だ。
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