第331話 戦い済んで日は暮れて

 その後詩織ちゃんお薦めのスーパーに立ち寄り惣菜や弁当を大量購入。

 何か幻の大陸だが菊池桃子の歌のような名前のスーパーだったが、確かに安い。

 メインの弁当が税込200円しないとか寿司8かんで300円しないとか。


 強烈な量を買ってそのままホテルの部屋へ。

 皆、まだ倒れ……1人足りないな。


「あ、おかえりなさい」


 風遊美さんの声が露天風呂方面から聞こえた。

 おいおい。


「あと、少し待っていて欲しいのです。ちょっと20分程雑用してくるのです」


 詩織ちゃんが消えた。

 そして残されたのは俺と大量の食物と鉱物色々。


「何処へ行ってきたんですか」

「買い物です。島で買えない部品と夜の食料等を」

「成程、それで結構時間がかかったんですね」


 確かにもう午後7時近い。

 月見野先輩と香緒里ちゃんはまだ寝ているけれど。


「良かったらどんな物を買ったか見せてもらっていいですか」


 風遊美さんがお風呂から上がったらしい水音に思わずどきりとする。

 んなもの露天風呂でよく横にいるくせにと思わないでくれ。

 状況が変わると感じ方もだいぶ変わるのだ。


 ちょっと後。

 浴衣姿の風遊美さんが風呂スペースから出てきた。

 風呂上がりの薫りとちょっとほてった顔色にどきっとしてしまう。

 やっぱりこういうのは慣れないよな。

 環境がいつもと違うと特に。


 俺は買った惣菜類や弁当を座卓の上に並べる。


「これは随分と買いましたね。それに安いです。この近くのスーパーですか」

「場所はよくわからないんです。詩織ちゃんおすすめのスーパーですけれど」


 風遊美さんはどうしようかな、という顔をする。


「あまり言いたくは無いですけれど、詩織さんのあの魔法は使わない方がいいです。他に広まったら昨年6月の事件や以前の香緒里さんの騒動以上の事になりかねませんから」

「確かにそうですね」


 実際その通りなのだろう。

 俺がちょっと考えただけでもその有用性は計り知れない。

 無論良い方向にも悪い方向にも。


「あと部品というのはどんな部品を買ったのですか」

「こんな感じですね」


 俺は鉱石標本店で買った石を並べる。

 詩織ちゃんが買ったのも俺が買ったのも一緒だ。

 でも一応わけておこうか。


 風遊美さんが並べられた鉱石類を見て、ちょっと考えて質問する。


「この綺麗な石は何に使うのですか。見た限りでは魔石とは違うようですけれど」


「これは杖用ですね。魔力を増幅した時に、使用者の魔力のブレを補正するために魔力を蓄積したり放出したりする為です」


 現物の杖を見せた方が早いだろう。

 俺はバッグから杖を取り出す。


「この杖に装着して使います」


 風遊美さんはヘリテージ1号を手に取り、そしてまた少し考え込んでから口を開く。


「この無色の水晶とその他は何か理由があるのですか」

「無色のが俺が買った奴で、他は詩織ちゃんが買ったものです。いざという時の保険と言って」

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