第329話 魔法杖部品買出し紀行

 最後に北米組がそんなんありかという複層重ね的な皿を持って戻ってくるまで10分少々かかった。

 そして制限時間一杯まで満喫した結果……


 ほぼ全員ノックアウトという悲しい結果になった。


 このレストラン、ホテルビュッフェとしては点数は多い方ではないけれど、一つ一つの料理が美味しい。

 盛り付けも綺麗で凝っている。

 そしてこの連中にトドメをさしたのは、デザートの美味しさだった。


 皆気づくとほぼ動くのが苦しい状態。

 のそのそ動く連中を何とかエレベーターまで誘導し、8階のフロント前ソファースペースで荷物とチェックインの手続きをして、ほぼ3時ちょうどにキーを受取り和室3部屋に押し込む。


 なお部屋割りはやっぱり北米組、攻撃魔法科組、そして月見野先輩、風遊美さん、俺、香緒里ちゃん、詩織ちゃんの組に自動的にわかれた。


 幹事としては女子部屋2と男子部屋1のつもりだったのだが。

 まあいつもの事だけれども。


 部屋は3部屋ともほぼ同じ作りで、次の間、檜風呂、サウナ付という高級仕様だ。

 風呂も浴槽は広くはないが明るく開放的でいい感じ。

 で、部屋につくと13人の中で俺を除き唯一元気な詩織ちゃんが誘ってくる。


「さあ、買い出しに行くですよ!」


 おいおいいきなりかい。


「どうせ皆今日はもう動けないと思うのですよ。なら時間を有効活用スべきなのです。杖の材料を買いに行くのにちょうどいいのです」


 言われてみればもっともだ。

 まあこいつには別の意図も絶対あるのだろうけれど。


 しかし実は俺も詩織ちゃんが一緒のほうが好都合な面もある。

 魔力が強い人間が一緒の方が今回材料を判別するのに便利だ。

 だからここは協力するか。


「じゃあちょっと買い出しに行ってきます。何か欲しいものありますか」


 返事がない。

 屍のようだ、いや違う。

 一応香緒里ちゃんが手を振っているので了解はしているらしい。


「では、行ってきます」


 俺と詩織ちゃんは部屋を出る。


「それで杖の材料は何を買う予定なのですか」

「石、天然物の鉱石だ」


 俺は説明する。


「必要なのは電子部品で言えばコンデンサ。増幅した事による魔力の出力むらを均す為のものだ。どの属性の魔力でもある程度蓄積できるのが条件。ある程度の大きさの天然水晶あたりが無難だろうけれど石毎に特性が違うから実際に見ないと怖くて買えない」


 なので通販では怖くて購入できない。

 それが材料が島で揃わなかった理由だ。


「成程、理解したのです」

「出来れば今回は予備を含めて10個位は確保したい。次の段階の最強杖にも使う予定だからな」


 詩織ちゃんは頷いて俺の方を見る。


「それは私への貸与分も含むですか」

「一応2個はその分の予定だ」


「ならその2個は私との相性だけで考えて、他はできるだけ全属性フラットに対応できるものを探せばいいのですな」

「その通りだな」


「それで店は何処ですか」

「そんなに都合いい石がそうそうあると思えないからな、複数回る予定だ。最初の店はここから歩いて10分位かな」

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