第322話 いったいお前は何する気だ?
「でもそれならコンビニに行くなりすればいいだろ。普通の人は往復4~50分だけど、詩織ちゃんなら魔法を使えば実質すぐそこだし」
「コンビニは飽きたのです。そこで修先輩にお願いなのです」
でも俺は食べ物なんで持っていないぞ。
「何なんだ」
「ディバックの横、内側に隠している杖をよこせなのです」
おいおい、ちょっと待て。
何故それを知っているんだ。
「魔法工学科を舐めるでないです。増強魔道具の気配くらい感じるのです」
いや、俺も魔法工学科だけどさ。
確かに杖は持ってきている。
新型最強杖比較用に試作中の現有理論最強杖、ヘリテージ1号だ。
実は島では調達できない部品があり、今回の旅行で購入するつもりだった。
その為ついつい持ってきてしまった訳だ。
足りない部品とは魔力安定用のバランサーとして使うもので、主な機能はほぼ完成している。
つまり最強の杖の能力は既に発揮可能な状態だ。
「まだ完成品では無いし貸せる段階じゃないな」
一応嘘ではない。
「でも使用には問題ない状態なのですよね」
見抜かれている。
「別に買い物に使うだけなのです。何ならバックの中身を出してカバンに入れた状態のまま貸してくれれば、そのままカバンから出さずに使うです。問題はないのです」
いやいやいやいや。
「だいたいどこまで出かける気だよ。今までの魔道具だって1000キロ往復して問題ないんだろ。それがこの杖必要って、何処へ行く気だよ」
あ、黙った。
これは相当にとんでもない処へ行くつもりだったな。
詩織ちゃんはちょっと考え込んで、そして再び口を開く。
「修先輩は折角の新しい杖、性能を試してみたくないのですか」
あ、悪魔の誘いを始めやがった。
確かに試してみたいけれど……
「何も今試す事は無いだろう。まだバランサー部分が未完成だしな」
「逆に言うとバランサーが必要無い使い方をすれば問題無い訳なのですか」
あ、しまった。
つい口にしてしまった。
と、階段上から気配が近づいてくる。
どうも3人組の露天風呂タイムが終わったらしい。
「まあ今日は受け入れ体制も実はまだなので我慢するです。明日こそは宜しくなのです」
そう言って詩織ちゃんはちょっと場所を変える。
ちょうど3人組が部屋に戻ってきた。
「こんばんわなのです」
「こんばんわ。どうしたの、詩織」
「布団の数の問題があるので、今晩はこちらにお世話になるです」
おい、さっきと言っている事が違うじゃないか。
「それでは、もう少ししたらまた来るです。宜しくなのです」
詩織ちゃんはそう言って部屋を出て行く。
きっとこれから何処かへ買い出しに行くのだろう。
しかし一体この杖で何をするつもりだったのだろうか。
明日の夜が怖い。
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