第321話 そこまで温泉好きじゃない

 食事をしながら色々情報交換をしていたら、あっという間に1時間以上経っていた。


「これからどうしますか」

 と風遊美さん。


「午前0時で男女が変わる風呂がありますよね。それを今日中には攻めたいですわ。勿論外湯も制覇したいですし。外湯は午後10時まででしたかしら」

「なら温泉街巡りと外湯巡りで午後10時まで回れるところを回った後、最後に浪漫風呂で終わりにしましょうか」


 どれだけ温泉好きなんだ君達は。

 ふやけるのが先か湯あたりが先か。

 まあどうせ熱いお湯を埋める時間も必要だからそんなに長くは浸かっている事も無いだろうけどさ。


 他の皆様は適当に街を散策したり宿の風呂入ったりだそうだ。

 そうだよな、宿にもいい風呂が何箇所もあるのにわざわざ熱くて質素な外湯めぐりする必要はあまり無いよな。


 そう思っても言えないのが俺の弱い処だ。

 まあ外湯も場所ごとに湯質が違うそうなので意味がない事はないけれどさ。

 

 ◇◇◇


 という訳で部屋に戻ってきた時にはもう俺はくたくた状態だった。

 時間帯が良かったのか、今回は人が入れる温度になっていた処が多かったためもある。


 結局外湯制覇はあと1箇所、大湯を残すのみとなった。

 そして更に宿の風呂を2箇所入っている。

 おかげで俺は限界だ。

 もう倒れたい。


 ちなみに本日は別棟の3階にある3部屋を取ってある。

 この棟の3階はこの3部屋しかないから、事実上このフロア借り切りだ。


 そしてこの部屋、部屋専用の露天風呂なんてものまでついている。

 当然温泉好き3人がそれを見逃すはずはなく、現在入浴中。

 俺は『狭いから』という名目で逃げるのに成功したけれど。


 ちなみにこの部屋が和室15畳と次の間。攻撃魔法科+詩織組が和室14畳プラス6畳談話室プラスバス・トイレ付。北米連合が和室10畳プラス囲炉裏付次の間プラスバス付となかなか広くて豪華だ。

 作りもこの棟は鉄筋コンクリート造だけど部屋の調度が色々凝っている。

 確かにここで2泊でも良かったかな、そんな事を考えている時だ。


 トントン、と入口がノックされて開かれる。

 入ってきたのは詩織ちゃんだ。


「あ、修先輩だけですか」

「他3人はそこの階段上の露天風呂だぞ」

「いや、修先輩だけの方が都合がいいのです」


 何だろう。

 あまりいいことではない予感がする。


「まず理由は簡単なのです。お腹が空いたのです」


 おいおいまたかよ、と言いたくなる。


「今日の夕食はそれなりにボリュームあっただろ」

「でも派手さが足りなかったのです。率直に言わせてもらうとギブミー肉なのです」


 ちなみに明日の夕食は精進料理の予定だ。

 大丈夫だろうか。

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