第319話 外湯回りも大変だ

 学生会作成分のパンフレット類を学生課に提出し、行事関係の施設を予約して春休みに入る。


 今年もめでたく学生会には追試対象者が出なかった。

 なので旅行は無事全員で決行だ。


 今年は奈津希さんの見送りもあるので、奈津希さんの予定にあわせて22日午前便で出発する。

 なので強制労働は19日の終業式の午後、20日土曜日、21日日曜日の2日半の日程で行われた。

 なお22日出発の奈津希さんまで強制労働に参加していた。

 少しでも小遣い銭を稼ぎたいからだそうだ。


 そして22日月曜日の午前11時。

 羽田を発つ奈津希さんを俺達は皆で見送った。


 これで当分の間、奈津希さんとお別れ。

 まあどうせ戻っては来るのだけれども、やっぱり寂しい。

 なにせ一同の中心は実質奈津希さんだったからな。


 さて、気を取り直そう。

 今回の旅行は4泊5日。


 長野方面に向かい1泊。

 その後更に長野市内でもう1泊。

 その後東京へ戻って2泊というスケジュールだ。


 奈津季さんとの別れの余韻も早々にモノレール→山手線と移動し新幹線の中の人になる。

 新幹線に乗り継ぐ際に皆で弁当を買ったのだが、1人だけ3個も買った奴がいる。

 まあいつもの事なので誰も気にしない。


 新幹線、長野電鉄特急と乗り継いで、最後にタクシー4台に分乗。

 午後3時半近くに到着したのは某ジブリ映画のモデルになったとも言われるコテコテな和風旅館だ。


 いかにもな和室3部屋に通された後、早速何組かに別れて建物内探索に温泉街探索にと繰り出していく。

 俺は部屋でゆっくりと休むつもりだったのだが、例によって風遊美さんと香緒里ちゃんに捕まった。

 更に月見野先輩も加わった4人組で外湯巡りをするんだそうだ。

 食事まで2時間しか無いけれど大丈夫だろうか。


 フロントで外湯の鍵とガイドマップを貰い、更に巡浴手ぬぐいというスタンプを押せる手ぬぐいを4人分買って歩き始める。


「どこから回りましょうか」

「3番から上っていくか4番から5、6と回るかですね」 

「遅い時間だと遠くに行くのも何ですから、4番がいいのではないかしら」

「6番の目洗の湯は美人の湯らしいから確実に押さえたいです」

 俺はどうでもいいのだが。


 結局4番からという事で石畳風のタイルの道を歩いて行く。

 木製の格子っぽい壁の四番湯まで旅館の下駄と浴衣というスタイルで徒歩5分。

 基本的にここの温泉はちゃんと男女別で入口がちゃんと男女に別れている。

 なので俺も安心して入れる。

 で、カゴも鍵も扉もない格子状のロッカーに浴衣を入れ、風呂へ。


 あ、熱い!

 こんなの入れないぞ。

 仕方ないのでガンガンに水を入れる。


「修さん、そっちのお湯はどうですか」


 壁の向こうから風遊美さんの声。


「熱くて入れないですね。今薄めてます」

「由香里を連れてくればよかったですわ。一瞬で温度を下げられますし」

「ソフィーでも大丈夫ですね」


 向こうでも水道音。

 やっぱり熱いようだ。

 熱すぎて、なかなか適温にならない。


 うーん、他の外湯もそうなのかな。

 だとすれば、先は長そうだ。

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