第318話 まあ及第点にはなったかな
とりあえず皆、完成はしたらしい。
ここは工房なので、適当な容器は山ほどある。
なので適当な容器に入れ、俺の軽バンに乗せて皆で帰宅。
普段はバネ運送に使う台車で10階の部屋まで運び込む。
「おかえりなさい。料理の方は出来ているれすよ」
ジェニーが迎えてくれた。
奈津季さんがいない今、キッチンは風遊美さん、香緒里ちゃん、ジェニー、ソフィーの4人による合同管理制になっている。
おかげで微妙に麺類の出て来る比重が増えた。
まあ麺類と一口に言っても色々な種類を出してくれるので飽きはこないのだが。
「今日はおやつがメインらから夕御飯は簡単につけ麺れすよ」
と言ってもいわゆる具沢山のタイプなので充分なボリュームがある。
味もなかなか美味しい。
この調子なら奈津季さんがいなくても我慢はしなくて済みそうだ。
そしていよいよ、食後のデザートの時間だ。
それぞれがテーブルに運び、配置する。
俺は1人1つずつのちょっと大きめのどら焼き。
ルイスはカップケーキの上をくり抜いてクリームをつめ、くり抜いた部分をクリームの上にうさぎ耳状に飾ったもの。
小さいけれど見た目はなかなか美味しそうだ。
問題作はロビー作のバケツ?
大皿の上にバケツにしか見えないものが逆さに置かれている。
それが3つ。
何なんだこれは?
「いただきますの前にロビーさん、このバケツはどうやって扱うのですか?」
流石の風遊美さんも理解できないようだ。
「これはバケツプッチンプリンデス。これからプッチンするデス」
よく見るとバケツの裏側に、折ることができそうな突起がある。
それをロビーが魔法とパワーで折り取る。
確かに何かが皿の上に落ちた気配がした。
俺の魔法で確認する限り中はちゃんと固まっているようだ。崩れてもいない。
しかしロビー、このためにわざわざステンレスでバケツを作ったのか。
俺にはよくわからないセンスだ。
ロビーがバケツを上げると、ドーム球場のような感じに潰れた黄色いプルプルの塊が現れた。
多少重力で潰れ気味だしちょっとすが入っちゃった感じで凸凹だが、確かに巨大プリンが出来ている。
「うーんバケツプリンの話は前にしたれすが、実物を見るのは始めてれす」
「ジェパニーズバケツプリンは確かプリンの素で作るのがスタンダードですが、焼きプリンで作れるとは思いませんでした」
間違った日本文化の伝道師である北米組2名による感想。
成程、この2人に影響された訳か。
という事でデザートの時間がスタートする。
「うーん、修のは間違いは無いんだけど新味に欠ける感じよね。無難という評価かな」
由香里姉、あなたが作る毒シリーズよりはましだと思っています!
「でもこれはこれで悪くないよな」
「よくある味だけど美味しいです」
まあ無難路線狙いだからな。
「これはフェアリーケーキですか。ちょっと固めだけど美味しいですね」
風遊美さんがルイスのケーキを食べている。
俺も食べてみるが確かに硬い。
クッキーよりも下手すれば硬い。
味はいいけれど。
「多分混ぜ過ぎで膨らまなかったのですね。でも味は美味しいですわ」
という月見野先輩の評価がきっと正しい。
ルイスがちょっとほっとした顔をしている。
どうも心配だったらしい。
一方、巨大プリンは。
「これは美味しいけど取ると崩れるのです!」
と言いつつ大量に分捕る詩織ちゃん。
確かに強度がぎりぎりなせいか、ちょっと取るとふにゃっと変形する。
「あとカラメルソースも出来れば欲しかったのです」
「まあどら焼きのあんこやケーキのクリームと食べればいいんじゃないでしょうか」
概ね好評のようだ。
奈津季さんがいない割には上手くいったと思っていいだろう。
取り敢えずめでたしめでたし……かな。
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