第26章 次の始まりの少し前に ~春の章~
第317話 指導者不在のホワイトデー
奈津希さんは留学先での手続きその他で島を離れている。
この後18日に戻ってきて19日に卒業式で、そして2日挟んで22日に日本を発つ予定。
勿論盛大に見送るつもりだが、今の問題はそこじゃない。
本日は3月14日日曜日、ホワイトデー。
つまりお返しスイーツを奈津季さん抜きで作らなければならないという事だ。
面子は俺、ルイス、ロビー。
俺は例によってどら焼きを大量生産する予定。
ルイスとロビーはどうするのだろうか。
非常に不安だ。
なお現場は学生会工房内に設けられた特設キッチン。
かつてのアジの開き作成機を改造した大型オーブンや仮設で作ったコンロ、流しも一応あるので一通りのことは出来る筈だ。
無論腕があれば、という事なのだが。
なお今回は『共同作業なし・アドバイスすら禁止』という制約もついている。
「その方が面白そうですよね」
と言ったのは風遊美さんで、困った事にその場の全員が同意してしまった。
なので俺は手が空いてもルイスやロビーの作業を手伝う事が出来ない。
さあ、どうなるのか。
見たところルイスはケーキ風の何かを作る模様だ。
今は溶かしバターと卵と砂糖と小麦粉を物凄く念入りにかき混ぜている。
俺の魔法による成分分析ではグルテンが大量に出ているが大丈夫だろうか。
でも共同作業なし口出し厳禁なので何も出来ないが。
よくわからないのがロビーだ。
卵を少なくとも10個は割ってかき混ぜている。
他に自作らしいバケツに見えるものが数点。
何をする気だろう。
まあいいけれど。
なお、今年は腹ペコのグレムリンは登場しない予定。
マンションの方で責任を持って管理するとの事だ。
小豆をうましつつ、どら焼きの皮の代用となるホットケーキを量産中の俺。
今回はどら焼きの中にはあんこだけでなく生クリームも入れる予定。
なお生クリームは市販のホイップ済みのものが冷蔵庫に既に準備されている。
正直泡立てるのも面倒いし冷やすのも……という訳で、簡単な方を選ばせて貰った。
味に対するリスク管理という面もある。
ホットケーキミックスを使うのも同様にリスク管理。
要は俺は自分の料理技能を信じていないのだ。
料理にはどうもレシピに書いていないお約束事が多すぎる。
なので今回は出来るだけリスクを回避して無難路線を目指すべきだろう。
僚友の腕を信頼できない今は余計にだ。
制限時間は午後5時。
現在は午後1時。
このまま行けば俺は余裕だが2人はどうだろうか。
見るとルイスはカップにさっき混ぜていたものを入れてオーブンに入れる模様。
ロビーは……何をやっているのだろう。新造したらしい釜らしき物にバケツっぽい金属容器を3つセットして火を焚き始めたぞ。
どうなるんだ一体!
俺は大変に不安だ。
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