第312話 悪魔なゲーム(1)

「それではゲームの説明は私から」


 ソフィーが説明を始めたことで、ちょっと俺は警戒モードになる。


「まずゲームに使う道具を配りますね」


 配られたのはふせんくらいの大きさの小さな機械。

 全体はプラスチック製で、長方形の片側1センチ位だけが金属製だ。

 俺のには金属製部分の反対側に7と記載されている。


 そしてソフィーはノートパソコンを液晶テレビに接続し、画面を出した。

 画面には1から14までの番号が3列に並び、それぞれに何かを示す2桁の数値が緑色で表示されている。


「この機械は持っている人の脈拍、血流、魔力変化を測定する装置です。試作品の簡易型なので実用化はまだ少し先ですけれども。

 とりあえず皆さん、この銀色の部分を左手の親指と人差指で挟むように持ってみて下さい」


 この機械の原理や機構メカニズムやデータ取得方法等ついて、実は俺も良く知っている。

 俺の知っていた時点より遙かにスマートな形にはなっているけれども。

 それにこんな風に自分に影響が降りかかってくるとは思ってもみなかったけれどさ。


 皆、指示通り左手で装置をつまむようにして持つ。

 途端に画面上の数値が動き始める。

 色は緑のままだ。


「お持ちの装置に記載してある番号が、画面上の番号になっています。今はまだ皆さん緑色で数値が低いので、平常心に近い状況だと判断できます。ただ……

 9番の装置をお持ちの方は誰ですか」


 ひくっと9番の表示が一瞬黄色になった後、愛希ちゃんが手を上げる。


「若干愛希さんが緊張気味と出ていますが、本番は今の状態を元に補正をかけるので心配はいりません」


 凄くいやな予感がする。

 これって要は嘘発見器だしな。


「ゲームの説明に移ります。ゲームそのものは簡単です。これから1人ずつ発言をして頂きます。その中で動揺して表示が赤くなったら負け。負けた人は装置をテーブルの上に置いて下さい。負けた人はそのゲームでの発言権も無くなります。

 そうやってゲームを続けていき、残った人が半分になればゲーム終了です。

 次のゲームは、前のゲームで負けた人が装置を持ちます。前のゲームで勝っている人は発言権はありますが判定はありません。これも同様に進めていって半分になればゲーム終了です。

 ここにいるのは14人ですから、最初は7人負け。次は負けた7人が始めて4人負け。次は4人で始めて2人負け、最後は2人の勝負にしましょう。

 要はいかに平静を保てるか、相手の動揺を誘う発言が出来るかというゲームです。なお発言者がゲーム参加者の場合、自分も測定されている点には充分留意して下さい」


 おいおい。

 これってかなりえぐいゲームだぞ。

 確かにバレンタインデーに相応しいゲームかもしれないけどさ。


「このチャンスに疑問に思っていることを根堀葉掘り聞くのも手だよね」


 早速理奈ちゃんが煽っているし。


「ではゲーム開始です。まずは誰から発言するかですが、最高学年と最若手という事で、由香里先輩と理奈さんがじゃんけんをして下さい。勝った方から左へ回しましょう」


 ケーキの順番よりこのゲームのほうが危険だ、きっと。

 そう思いつつ2人のじゃんけんを見守る。

 勝負はグーとパーで理奈ちゃんの勝ちだ。


「それではゲームモードに移行しますね」


 ソフィーがパソコンの方へ歩いていき、何かキーを押す。

 緑色の範囲内で揺れ動いていた数値が一旦0にリセットされる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る