第311話 やっと普通に戻ったか?

「という訳で、今回はちょっとメイド喫茶風にしてみたんだがどうだった?」


 オムライスを全員に配った時点で、やっとメイド喫茶モノマネの縛りを解いたらしい。


「勘弁して下さいよ。これ以上変な文化を伝道しないで下さい」

「前にクラスの男の子にやった時は評判が良かったんですけどね」


 今の台詞から察するに、今回の主犯は理奈ちゃんらしい。


「やはり男装女子による執事喫茶の方が良かったれすか」


 ジェニー、君の常識はどこかで矯正の必要があるようだ。


 改めて他のおかず類も運ばれてくる。

 ハンバーグとか鶏唐揚げとかポテトフライとか魚フライとか、まあパーティ的なおかずだ。


「本当はメイド喫茶状態のまま食事に突入して、スプーンを持ってご主人様に食べさせる処までやろうかという案もあったんだ。でも面倒だから中止した」

「懸命な判断です。出来ればメイド喫茶案そのものを撤回していただければもっと賢明だったかと」

「いやさ、理奈が面白いカタログ持っていてな、見ると三千円ちょいでメイド服が買えると書いてあるじゃないか。社長に相談したら春休み旅行の分と兼ねて強制労働3日でいいって言うから、ついな」

「恥ずかしかったけれど面白かったわ。ただこのメンバー外には恥ずかしくて見せられないけれど」


 由香里姉にもそんな願望があったのか。


「可愛いは正義なのですよ」


 詩織ちゃんおまえは面白がっているだけだろ!


 しかし、改めて女性陣を観察してみるとこれはこれで結構面白い。

 堂々系が鈴懸台先輩、奈津季さん、ジェニー、ソフィー、詩織ちゃん、理奈ちゃん。

 ちょっと恥ずかしい系が由香里姉、月見野先輩、香緒里ちゃん。

 真っ赤になって動けないのが愛希ちゃんだ。


「愛希、大丈夫か」


 ルイスも気づいたらしく声をかける。


「ん、でもこの格好……」

「大丈夫、似合っていると言っていいかはわからないが可愛いのは確かだ」


 あ、愛希ちゃんがさらに赤くなった。

 出たなイケメン攻撃。

 本人は無意識だが気づいたお姉さん方がにやにやしているぞ。


 ひととおり料理もなくなったのを見計らって、奈津季さんが宣言する。


「さて、これからが今日のハイライト。ケーキ争奪戦だ!」


 そう言って空いた大皿を下げて何か持ってくる。

 見るとコーヒーカップ大のチョコケーキが14個乗っている。

 更にコップとサイダーの瓶が運ばれてきて、各人の前にサイダー入りのコップが配られる。

 このサイダーは何を意味するのか。


 よく観察すると女性陣にそこはかとない緊張感が漂っている。

 何か昨年もこんな緊張感があったような……


「さて解説しようか。何人かの強ーい要望があったので、今年のケーキは当たり付きになっている。率直に言うとデスソース混入済のケーキがこの中に一個ある。

 これからゲームをやって、負けた人の左隣から左送りにケーキを一個ずつ取っていく。全員が取り終わったら一斉に食べ始める。ルールは以上だ。なおゲーム及びケーキ選択時に魔法を使って判定するのは禁止な」


 ケーキはどれも同じように見える。

 とすると、取る順番はあまり気にしなくてもいいよな。

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