第310話 この様式美は違うよな?

 今年の2月14日は金曜日だ。

 ルイスとロビーは一度寮に着替え等を取りに行ってから俺と合流する。


 時間は午後6時ちょうど。

 そろそろマンションに向かってもいい頃合いだ。


「今年はダビデ像は無いだろうな」

「あれは勘弁してくれ」


「何デスか、ダビデ像とは」


 そう言えばロビーは昨年のバレンタインデーは知らないんだよな。


「昨年詩織がルイスそっくりのダビデ像を作ったんだよ。全裸のさ」

「OH!それは見たかったデス」


 等と話しながらマンションへと帰る。


「とりあえず要注意は奈津季先輩と詩織と、あと理奈だな」

「でも注意しても逃げようは無いけどな」


「そんなに危険な行事なのデスか」

「わからない。出たとこ勝負だ」


 とか言いながらエレベーターで最上階へ行き玄関へ。

 インタホンを押してドアを開ける。


「ただいま……えっ」

「お帰りなさいませご主人様方」


 理奈ちゃんがメイド服で出迎えてくれている。

 黒いワンピース風の服に白いふりふりがついたエプロンドレス。


 うん、これはどう見てもメイド服だよね。

 よく見ると女性陣全員、デザインは違うがメイド服っぽい服を着用している。

 由香里姉や鈴懸台先輩や月見野先輩まで。

 何なんだ今年のコンセプトは!


 ご丁寧にも黒と白のテーブル掛けまで装備された席に案内され、着座を強制される。

 何が何だかわからないがまあその通りに座る。


「日本のバレンタインデーとはこんな感じなのデスか?」

「違うロビー、今回は一番今までで変だ!」


 一体何がどうしてこうなったのだろう。


「それでは本日のお食事をお持ち致します」


 凄く悪そうだがいい笑顔の奈津季さんがキッチンからお食事を持ってくる。

 前にアジの開きパーティで使った巨大皿に乗ったそれは、超巨大オムライス。

 分厚さはそれほどでもないが面積は新聞1面程度はあるぞきっと。


「それではメイドの皆から愛情を注ぎますわ。萌え萌えキュン!」


 そう言って奈津希さんはケチャップで小さくハートを書いて、由香里姉に渡す。

 由香里姉がどことなく恥ずかしそうにハートを描き次と交代。

 以降鈴懸台先輩、月見野先輩、風遊美さん、香緒里ちゃん、ジェニー、ソフィー、詩織ちゃん、愛希ちゃん、理奈ちゃんとケチャップでオムライスに色々描いていく。

 結果、黄色地に赤色の前衛芸術が出来上がった。


「それでは修様、申し訳ございませんがご協力頂けますでしょうか」


 香緒里ちゃん、微妙に恥ずかしそうに言わないでくれ。

 萌えという単語が理解できそうになってしまうじゃないか。


「俺の魔法で14等分すればいいんだろ」

「出来れば皿に載せる処までご協力いただければ幸いなのれす」


 ジェニーが空の皿を並べていく。

 はいはい、俺の魔法でやればいいんでしょ。

 確かに取り分けるのが面倒そうだしさ。

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