第296話 基準不可解なドレスコード

 テュルソスの杖量産版8本は無事出荷した。

 年内、クリスマスまでには届く予定だ。


 なお大量注文のおまけにテュルソスの杖量産版万能型1本も同梱している。

 万能型とは拡散特性を外科と内科の中間にした代物。

 まあ知り合い向けサービスといった処だ。


 さて、今日は12月24日。

 授業最終日にしてパーティ当日だ。


 例によってドレスコードがあるので、昨年と同じスーツを用意した。

 ルイスもロビーも俺の部屋で着替えている。


 ルイスは昨年懲りたらしく、真っ当な紺色スーツだ。

 かたやロビーは何故か緑色のタンクトップに迷彩柄ズボン。

 そして何故か髪をムースでアイロンみたいな変な形に固めている。


「ロビー、その服装が何か聞いていいか」


 うん、ルイスにはその服装の意味はわからないだろうな。


「ジェニーさんが言っていたデス。この格好で片膝突いて『間違える』と言えばOKだそうデス」


 ロビー、君もわかっていない。

 正しくは『待ちガイル』だ。

 でもクリスマスと関係ないだろ、それ。

 筋肉的にも完璧で、思い切り似合っているけどさ。


 3人共着替え終わったのでリビングへ。

 服装審査官のジェニーと詩織ちゃんがやって来た。

 今回はジェニーはダブダブのトナカイのきぐるみ、詩織ちゃんは猫耳サンタ服ワンピースという怪しいスタイルだ。


「ロビーは完璧れす。それでは事前に教えたポーズを」

「間違える!」

「もうひとつは」

「ソニックブーム!」

「合格なのてす」


 他の連中からも拍手がわく。

 いいのかそれ。


「ルイスもなかなかいいのです。出来ればスーツより濃い緑色の学園章付ジャケットの方がよりらしいのですけれ」

「僕は映画じゃない」


 こっちは本人、わかっていて気にしているようだ。


「それに比べて修先輩は面白くないです。でもまあこれ以上面白くなりそうにないのでOKなのです」


 消極的OKだがまあいいとしよう。

 仮装大賞するよりよっぽどマシだ。


 全体の服装を見ると、仮装系は他に奈津希さんと理奈ちゃんか。

 奈津季さんはバニー耳付き肩出しミニスカサンタコスというもう色々間違った代物。

 理奈ちゃんは帽子と服につけたわざとらしい白い大きなボタン風のところだけはサンタコスだけど、その服どう見ても黒のゴスロリ服だ。

 髪もいつものポニテで無く解いて長く垂らしているし、よく見るとまつげがわざとらしく長い。

 間違いなく確信犯だ。


「そんなの何処に売っていたんだ?」


 ルイスが思わず質問してしまう。


「淑女の嗜みですわ」


 理奈ちゃんの横で愛希ちゃんがルイスに説明。


「前に女子同士でのパーティで冗談で着て気に入ったんだよ。実は通販で買えて案外安いんだ」

「余分な事は言わないで欲しいですわ」


 キャラまで変えてやがる。


「ちなみにまつげのエクステンションはダイソーで大量購入して持っているんだ。あのわざとらしいつけボタンも去年ダイソーで買ったのの流用だよ。あと服は安い分縫いが弱くて実は手作業で補強して……」


 何故説明が止まったかと見てみれば、愛希ちゃんの周囲に白いキラキラが見える。

 由香里姉が使うのと同じダイヤモンドダスト。

 つまりは警告だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る