第24章 冬は勉めて(1) ~修4年冬編・前半~
第295話 もうすぐ冬休み
風遊美さんは魔技大の推薦入試に無事合格した。
そして本年も来年の学生会役員立候補者は現れなかった。
なので来年の役職は順送り。
引き継ぎも何もあったものじゃない。
一応会長が香緒里ちゃん、副会長がジェニー、書記がソフィー、会計がルイス、監査が詩織ちゃんとなっている。
でも実際は適当に仕事を割り振ってやるので表向き以外には役職は余り関係ない。
まあ俺1人が抜けただけなので、変化があまり無いのはしょうがないのだが。
クリスマス会は今年は盛大にやる事になった。
由香里姉、鈴懸台先輩、月見野先輩から始まり愛希ちゃん理奈ちゃんロビーまで、総勢14人。
どうせ毎週金曜日の食事や露天風呂で顔なじみだし、もう全員でいいだろうという話になった。
なお裏では奈津希さんの壮行会第一弾を兼ねている。
これは本人には内緒だ。
なお会場は当初はバネ工場横スペースのつもりだった。
でもパーティ後に露天風呂が使いたいという諸方面、ぶっちゃけ俺とルイス以外の声により例年通りマンションでの開催となった。
露天風呂に引きこもり用施設を増設しようかと、俺もちょっと本気で悩んだ。
残念ながら時間的制約で作れなかったけれども。
その代わり工房その他で俺が作ったのはプレゼント2品。
1つはクリスマスのプレゼント交換用。
もう1つは奈津季さん用の例のボールペン最終調整品だ。
プレゼント交換用は昨年と同じストラップ型非常用魔道具。
今回の魔道具の形はちっこいネズミ型。
来年の干支のねずみ年にあわせてだ。
性能は昨年比で概ね1割程度アップ。
まあ小さいし予算制約も厳しいのでこんなものかな。
奈津季さん用ボールペンは威力を更に若干下げ、コントロール最重視仕様にした。
要は奈津季さん専用杖プレアデスと同じ仕様だ。
ただ制作した俺の技術と知識が大分上がった分、性能はかなり上がっている。
大きさこそプレアデスの7分の1程度だが、機能的には数段上だ。
今の俺の技術と知識のほぼ全てが詰まっている。
他にも折りたたみ大型テーブルや椅子なんてのも作成した。
現在のマンションのテーブルでは流石に14人は座れない。
だから今までは金曜日には応接セットとテーブルとを併用していた。
だがついに部屋主の由香里姉から大型テーブル作成指令が来てしまったのだ。
なので止む無く作成し、リビングダイニングに配置。
流石に28畳の巨大部屋だけあって、ちょっと配置を変えるだけで収まってしまった。
まあ普段は折り畳んで俺の部屋に仕舞っておく予定なのだけれども。
そう言えば魔道具については別な注文もあった。
風遊美さんがわざわざ学生会室までやって来たのだ。
「修さんお願いがあります。実は学園祭で販売していた市販版の杖、再注文はできますか」
風遊美さん自身はテュルソスの杖オリジナルを使っている。
なので注文する必要は無い筈だ。
だから理由を聞いてみる。
「エリカからメールがあったんです。あの杖がとてもパワフルなのに使い易いって喜んでいましたよ。ただ他の人からも同じものが欲しいと言われて困っているそうです」
エリカさんが持ち帰ったのはオリジナル仕様の外科バージョンだ。
確かに使いやすいだろうし出力も高いけれど……
「すみません。あれは市販不許可なんです。今特区外へ市販許可が下りているのはデチューン版テュルソスか改良型ケーリュケイオンまでなんです」
「それはわかっていますよ。私も同型の杖を使っていますから」
風遊美さんはオリジナル仕様の性能も十分知っている。
そしてオリジナル仕様は特区外はおろかこの学校でも市販は許可されていない。
「欲しいのは市販版の方だそうです。あの後学園祭の時に残っていた4本全て買っていったそうです。
市販版の方でも今まで使っていた杖と段違いに使い易いってとても評判良いそうです。ただ4本しかないので研究室内で交代で使っている状態だそうで。なので出来れば人数分欲しいと……」
俺は少し安心する。
それなら対応可能だ。
「市販版でいいなら増産できますよ。在庫がないので2週間程度かかりますけれど」
「それでいいのでお願いしていいですか。出来れば内科用3本と外科用5本。料金は支払います」
なら問題は全く無い。
という訳でなんやかんや工房の方も忙しかった訳だ。
勿論バネ工場の方もあるし。
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