第294話 査問会をはじめるよ

 さて、色々有りすぎて長かった学園祭もやっと最終日の午後5時30分だ。

 あと30分で学園祭は終了。

 ちなみに閉会式は無いので俺も気楽だ。


 滅多斬り大会でのルイスは結局、準優勝に終わった。

 残念ながら鈴懸台先輩の強大な壁は今年も崩せなかったようだ。


 今、一人を除き学生会役員は全員揃っている。

 詩織ちゃんだけは買い出し中だ。


 ちなみに詩織ちゃんに買い出しをお願いしたのは勿論ある目的がある。

 そして目的のために本人以外の役員全員に事情を説明済みだ。

 さて、上手くボロをだしてくれるといいが……


「只今ですよ。今回は何処も売り切れで苦労したのです」

 詩織ちゃんが帰ってきた。

 持っているパンの袋を見て俺は確信する。

 やっぱり……と。


「詩織ちゃんありがとう。さて、食べながら学園祭を見送りますか」


 学園祭が終わっても午後7時過ぎ位までは念のため学生会、実行委員会ともに詰めている。

 なので例年こんな感じでこの部屋から学園祭を見送る事になる。


 でも俺は今年までなんだよな。

 来年はかなり寂しくなるかな。

 そんな事を思いつつ、パンを整列。


 いただきますを皆で言ってから、パンパーティを開始する。

 一通り皆でがっついた処で詩織ちゃんの方を見る。


 うん、全く用心していない。

 両隣に攻撃魔法科女子2名が配置されている事にも疑問をもっていないな。

 よろしい、そろそろ頃合いだ。


「ではそろそろ最後のイベントといきますか」

 そう言って俺はある魔法を唱える。

 加工魔法の応用だ。

 効果は、詩織ちゃんの座っている椅子と床と部屋全体との固定。


「あ、何をするですか」


 同時に両脇配置の愛希ちゃんと理奈ちゃんが、マジックテープ付バンドで詩織ちゃんの両足と左手を椅子に固定した。

 この状態なら流石の詩織ちゃんの魔法でも離脱は出来ない。


「査問会を開始するぞ。まずは詩織被告人、査問会を前に言いたいことはあるか」

「何なのですか。私は無実なのですよ。何の査問なのですか」


 まだ気づいていないな、よしよし。


「では副会長、本日のパンの判定は」


 香緒里ちゃんがにやけ気味の表情を隠さずに口調だけはもっともらしく告げる。

「それぞれのパンについては、本土の八王子、世田谷区、中野区、横浜市青葉区所在のものと思われます。これだけのパン屋が本土から出店しているという話は私は聞いてないです」


「次、会計担当」


 ルイスはしょうが無いな、という感じだ。

「詩織から渡されたレシートを確認した。香緒里さんの言うとおりだな。偽装工作も何もない」


「と言う訳で、再度本人の弁明を聞こう」

「大学部の出店に出ていたですよ。本土なんて遠くて行ける訳無いじゃないですか」


 まだ白をきるか。ならば最後の物証確保だ。

 俺の魔法で場所は既に掴めている。

 詩織ちゃんの小さなバックの中からあっさりと目的のものを取り上げる。

 おいおい、俺が渡した時以上に改造してあるぞ。

 人工水晶が天然高級品になっているし、しかも内部に俺の制作している新型杖と同様に魔法陣を展開してやがる。


「これについて、ロビーの審査魔法で判断してくれ」

「凶悪な魔法増幅具デス。詩織さんなら……約7倍程度に魔法増幅可能デス」


「という訳だ。ちなみにお前の親父も嘆いていたぞ。頼むから島にいるはずの日に本土のホームセンター扱いのレシート精算をしてくれるなと」


 詩織ちゃんはやっと状況を把握したらしい。


「うう、はめたのですね」

「本土に魔法で気軽に買い物に行くほうがおかしいの!これは当分取り上げな」


 俺はあらかじめ用意してあったカット済み鉄板を魔法で加工し、その中に改造済みアミュレットを封印する。

 詩織ちゃんの魔法でもこれなら当分は使えまい。


「ああ、それが無いとお買い物不便なのですよ。ジョ●フル本田とかぶー●・●ーる・ぶらんじぇりーとか……」

「白状したな。完全にアウト!」


 そんな感じで。

 今年も賑やかに学園祭は終わっていった。

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