第292話 主任教授からの臨時試験(2)
ふと、田奈先生がまだまだ悪そうな顔をしている事に気づいた。
ちょっとばかし嫌な予感がする。
かと言って逃げられる状況でも無い。
「さて、さっきの試験でB+評価な長津田君に再試験だ。今の魔法を見て考えた事を表現してみろ。対象はこのパワードスーツだ」
田奈先生の魔法で動いていたパワードスーツだが損傷部位はかなり多い。
例えばバランス調整用の電子機器やバッテリー等の部品も再起不能だ。
「ひょっとして、便利な修理屋やらそうとしていますか」
「明日は文科省の役人が視察に来るからな。派手目なものは出来るだけ用意したい。これが直れば予備機をデモンストレーション用に使えるしな」
全く油断も隙もあったもんじゃない。
まあ確かに今見た魔法の応用を試してみたいし、やるけどさ。
田奈先生からアミュレットと招き猫を返してもらう。
「この魔道具に関しては評価はAをつけてやっていい。安定感もあるし無茶な出力に耐える耐久性もある」
「あそこまで無茶な使い方は想定していませんでしたけどね」
「対象は薊野姉妹あたりか」
「あとはあなたの娘です」
「成程、全部了解した」
まあそんなやり取りは忘れて、俺も今のを参考にやってみるか。
田奈先生と同様、両手に魔道具を構える。
実はこの時の両手の位置も何気に重要。
上手く双方からの力が焦点となるパワードスーツで極大に共振するように。
そしていつものような部位別修理では無く、全体に一気に魔法をかけてみる。
要はさっきの田奈先生の魔法のコンパクト版だ。
さあ、行くぞ。
一気に魔法を発動する。
2つの魔道具で増幅された魔法が共振、パワードスーツの中心で極大の波になる。
それ以上細かい操作は今回はしない。
あとは全てがあるべき場所にあるべきように戻る事を意識するだけ。
全ては自動で修理されていく。
俺の審査魔法が修理完了と告げるまで、多分1分程度だったろう。
おかげで俺の魔力は残量10パーセント程度。
「今度はA評価だな。魔力の割には魔法のセンスはいい。ここは褒めてもいいな」
全然褒めていない口調で言う。
「ただ新たに減点材料だ」
「何ですか」
俺に心当たりは……微妙に色々とある。
「今私に貸したアミュレットとほぼ同じもの、うちの詩織に与えたな。そのおかげか微妙につじつまが合わない事が起こっている。
例えば学校に行っていてちゃんと島にいる日の筈なのにジョ●フル本●千葉ニュータウン店で買い出ししたレシートが出てきたりな」
ジ●イフル●田千葉ニュータウン店とは、前に旅行で詩織ちゃんやルイスと出かけた超大型ホームセンターだ。
でも、おい、まさか。
「詩織の魔力は私より高い。そして持ち魔法は空間魔法だ。そしてあのアミュレットは魔法による自己増幅型。普通の魔力A程度なら2倍程度、私の全力で4倍強。詩織の全力だと……何倍だろうな。きっと本土に遠隔移動して戻れる程度なのだろう」
無茶苦茶すぎるだろう!
「それらの内容を併せ見た上で今回の試験結果を加味し、罪状は不問としよう」
「子供の教育は家庭の仕事です」
「どの口でそれを言う」
詩織ちゃんに関してはお互い様だろう、きっと……
「あとこのエアスクーターのこの色と角と、妙にピーキーなセッティングは何なんですか」
「わからないか。06S指揮官専用機仕様だ。赤くて指揮官の角付きで3倍速い。要はシャア専用」
「誰ですかそのシャアって。中東方面の人ですか」
「本当に知らないのか、長津田。あの赤い彗星だぞ……。坊やだからか」
勿論本当は知っている。
というか赤くて角がある時点でもう答は想像がついていた。
だだ知っているとは絶対言ってやらない。
同類とは見られたくないからな。
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