第291話 主任教授からの臨時試験(1)
砂浜に何とかホバギーを持ち上げ、田奈先生は潜航艇を降りる。
俺も乗りにくいエアスクーターを降りた。
「さてここで長津田に問題だ。この2機を一番早く現場復帰させるのはどうすればいいか。配点30点で評価はAからEまで、C以上で一応合格」
「パワードスーツは魔法で修理可能です。ただホバギーは無理ですね。早急に汎用エンジン2機を含む部品を発注し、本体はこの島1台のレッカー車を頼んで工房へ搬送するしかないでしょう」
「評価B+。無難だが面白くない答えだな。点数にすると30点中21点」
「なら評価Aの回答は何なんですか」
少なくとも俺には他の方法は思いつかない。
田奈先生は悪そうににやーっと笑う。
「なら評価Aの回答を見せてやろう。そのかわりお前が今持っている魔法強化具を全部貸せ。最低3点はあるはずだ」
田奈先生の魔法は俺の上位互換。
なので意識できる範囲に存在する機械の所在は全て認知及び操作可能だ。
「壊さないでくださいよ」
と俺は独鈷杵型アミュレット先行試作品、小型万能杖試作1号招き猫型、奈津季さんへのボールペンを渡す。
「このボールペンはいい。誰かへ贈呈予定だろう」
田奈先生はボールペンだけ俺に返して寄こす。
何でそんなのわかるのだろう。
まあいいか。
「それでは評価Aの回答を見せてやろう」
田奈先生は右手にアミュレット、左手に招き猫を持ち、ホバギーの前に立つ。
「久々の大技行くぞ。修理魔法と審査魔法と時間操作魔法の合わせ技。秘技『再生!』」
凄まじい魔力が迸る。
ただでさえAクラス以上の魔力がアミュレットと招き猫で数倍に増幅されホバギー各所に降り注ぐ。
全体の魔力量だけでも一度だけ見た由香里姉の最終防御技『氷の城』以上。
それが恐るべき力と精度でホバギー各所を変形していく。
何が起こっているか解析魔法をかけて診る。
使っているのは先生が言った通り『修理』、『審査』、『時間』。
以前の時間に存在した形を『時間』と『審査』で確認し、『修理』する。
更に必要部品で足りない部分はある程度周りのそれほど重要でない部位等から材料を借りたりもしているようだ。
おそらく経過した時間は3分程度だろう。
目の前に出たのはほぼ新品状態のホバギーだ。
流石の田奈先生もちょっと呼吸が荒くなっている。
「どうだ、評価は」
「枠外扱いです。例外的処理が多すぎますしね。でも採点するならA+をつけざるを得ないでしょう」
ただこんな方法論は反則だろう。
真似できたものじゃない。
でもまあ、今の魔法と考え方と方法論は参考になる。
今度試してみるか。
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