第290話 やっぱり奴はベテランだ

「学生会長津田から学生会副会長宛、大会本部の状況はどうか、どうぞ」

「学生会薊野です。怪我人1人、かすり傷程度です。それ以外にこちらの動きは特にありません。どうぞ」


「学生会長津田了解。では学生会員は詩織とロビーを残して解散願います。あと学生会本部を俺が戻るまで開所願います。どうぞ」

「学生会薊野了解です」


 さあ、田奈先生のお手並み拝見といこうか。

 異常な速度でふっ飛ばして行った潜航艇を追って海上へ。

 俺の魔法で海中で稼働している機械の位置を探り、邪魔にならない場所で待機。


 しかしこの赤い飛行スクーター、無茶苦茶乗りにくい。

 異様にピーキーな設定になっていて、気を抜くとすぐとんでもない速度になる。


 さて、と。

 沈んでいる機械2台は水深70メートル位の場所。

 そして俺の水中スクーターは基本そんな深度は想定していない。

 まあ安全のためかなり強度の余裕はとってはいるけれど、設定はせいぜい30メートル程度。


 でも俺は全く心配はしていない。

 なにせ搭乗者が田奈先生だ。

 性格体型その他問題は多々あるが、技術と魔法はほぼ俺の上位互換。

 水深10メートルで壊れる機械なら9.99999999メートルで運用可能な腕と魔法を持っている。


 魔法で見るに、予想通り潜航艇の性能限界に挑戦している模様。

 で、魔力作動の方のパワードスーツが動き始める。

 内燃機関作動の為どうやっても動けないロビー制作タイプを抱えて、ゆっくり浮上し始めた。


 そう言えばロビー制作タイプ、ホバギーって田奈先生は呼んでいたな。

 便利なんで今後俺もそう呼ぶことにしよう。


 潜航艇もゆっくり浮上してくる。

 潜水病とか大丈夫なのだろうか。

 まあ田奈先生だからどうにでもするんだろうけれどさ。


 だいぶ水面に近づいてきた。

 パワードスーツの方はほぼ正常に稼働している。

 勿論色々壊れている部分はあるが、田奈先生の魔法で無理やり壊れた部分をバイパスさせ、魔法動作部分だけで動いているようだ。

 まあ、そんな事俺が魔法でやったら5分で魔法切れ確実だが。


 一報、ホバギーの方は重症だ。

 水を吸い込んでエンジンが完全に駄目になっている。

 ファンも欠けているし本格的な修理が必要だ。

 現状動かす方法は見当たらない。


 田奈先生の潜航艇が浮上した。

 パワードスーツとホバギーは水面すれすれの海面下。

 それ以上浮上する力は無いようだ。

 田奈先生は無線で何事か吹いた後、俺の方に怒鳴る。


「南浜まで持っていく」

 そのまま岩を避けて浜の方へゆっくりと移動開始。

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